瑠璃のかぞく

 私は、久しぶりにあの人に会った。
私とお母さんを気づつけて、苦しめた、あの人に。
本当なら二度と会いたくなかった。急用ができた、と言っていたときはびっくりした。
私は、愕然とした。顔も見たくなかった人に、会いたい、と言われたのだから。
あの人が、刑務所にいるなんて、思ってもいなかったー。

「なんで、呼んだの」
「いやぁ~久しぶりに会いたくなってな。ダメか?」
絶対に嘘だ。どうせ、私たちを思いきり傷つけたいだけだろう。
「真剣に言ってるの。冗談で言うなら、帰るよ。私たちを散々苦しめて、よくそんなこと言えるね」
「娘のことが恋しいんだ。たまには…いいだろう?」
「よくないよ!お前は私をいじめた!虐待した!叩いて、殴って、私たちをっ苦しめたのっ」
あいつの顔なんて見たくない。できれば、今すぐ消えてほしい。なのに…
「やめなさい、瑠璃。あまり感情的になっちゃダメよ」
お母さんがさらりと言った。その瞬間、私はお母さんの心が読み取れたような気がした。
「お母さん、なんで、会うって約束しちゃったの」
驚くほど、冷めた顔で、私は言った。
「だ、だって、瑠璃に会いたいって言ってたのよ。可愛そうじゃない。」
「私は会いたいって言ってないじゃない。どうせ、まだ好きなんでしょ。ーあいつのこと。」
「もう、離婚したじゃないの。とっくに終わったことじゃない。」
お母さんも、気まずそうに顔をしかめる。何か隠してる。絶対、脅されたんだ。
あいつが可哀そうだったから、わざわざ刑務所に来てたんじゃない。
まだ、あいつのことが好きだったから、遠い刑務所まで来たんだ。絶対そう。
『まだ、俺の事好きなんだろ?』って脅されて、でも嫌いじゃないから断れなかった。
そんなところだろう。
「ち、違うのよ。ちょっと、可哀そうだったのよ。」
「可哀そう?私たちに暴力振るった人が?信じらんない」
「瑠璃…どうして?」
「そんなの、私が聞きたいよ!なんであんな人の事まだ好きなの?」
近づいてきたお母さんを、力ずくで突き放した。
「瑠璃っ!」
「ごめんね、お母さん。私、意味わかんないの。」
思いっきり、にらんでやった。どうせ、そんなんでしょ。
ずっと、我慢してたのはあの人のこと今も好きだから。何のために私はずっと耐えてたんだろう。
私は、あの人が嫌いだ。なのに、なんで耐えてたのかな。
「私は、この人のことが嫌い。大嫌い!顔も見たくないし、二度と話しかけられたくない。」
お母さんが、息をのむ。
「だから、この人のことが好きなお母さんも嫌い。」
なんのために、私はこんな人と一緒に居たの?
いくら考えても、答えは出なかった。