迎えた懇親会。
会場に行けば三学年の生徒達が既に集合していた。
「で、なんでお兄ちゃん?」
「ん~?」
当日、幸華が家を出ようとすれば迎えに来たのは倫太郎。ご丁寧に衣装まで用意して持ってくるもんだから二重に着替え直す羽目になったのは言うまでもない。
「いや~この感じ懐かしいな~」
倫太郎は元一流橋高校の卒業生。
懇親会にも生徒時代に参加した経験はあるので慣れているようだが、今回は何故か幸華の同伴役として参加していた。
「史文様の護衛は?お兄ちゃん左近でしょ?」
「挨拶回りの時には同席するさ。何より今は史文様も自分の役割があるからね」
ほら、と倫太郎が指さす先には会場に入って来る史文様。隣にはエスコートされる幸舞の姿もあり、二人は美男美女同士お似合いだった。豪華な赤い着物姿で登場した幸舞はマウントのつもりなのか、史文の腕に絡みつけば周りの女子達を牽制していた。
今回の幸舞は生徒としてではなく、稀血の花嫁という立場での参加。彼女の護衛には青龍家に仕える妖に加え、白蛇の双子も狩り出されていた。
「分かりやすい子だよな~あんな着飾って鼻高々にして。後で女子に刺されないといいけど」
「なんてこと言うの…お兄ちゃん性格悪いよ」
途中、双子の兄・ハクと目が合えば「ゲロゲロ~♪」と吐きそうな顔で幸舞を指さすので慌てて止めるよう促す。
「おや?白蛇の双子か。さては幸舞、幸華の御用人だと知っての腹いせか?」
「どうかな、私に逆らう権利ないし」
「まあ稀血は妖・神にとって毒にも薬にもなるからね。何かの拍子に怪我でもされたらマズい」
稀血は嗅覚を狂わせる。
泥酔と麻薬のような作用を及ぼすせいか、花嫁は血の一滴すら流してならない。それでも神に愛された娘、誰もが羨む地位に幸舞は今いる。
「幸舞が史文様と結婚したら、幸華はお兄ちゃんが貰ってやるな!」
「何バカなこと言ってんの?兄妹だから」
倫太郎はその後、ニコニコ笑って幸華の頭を撫でていた。
今回の参加者は大きく分けて二パターン。
一つは着物姿で一つは制服。
着物姿の参加者は身分や位が高いことを意味し、妖や神、人でも九頭龍家のような家庭が対象。反対に制服姿の生徒はこの条件に合致しない至って普通の一般家庭を意味し、保護者もフォーマルなスーツ姿が大半だった。
「幸華に誕生日プレゼント取られたんだって?」
「…なんで知ってるの」
「幸舞が僕に自慢してきたんだよ。幸華に要らないから貰ったって。どう考えても噓なのに同情してやれば顔輝かせて喜んでたよ(笑)」
「…ホントお兄ちゃん、そういうとこ」
幸舞を遠目に倫太郎は笑って言いたい放題。
普段は誰の前でも紳士被る男がプライベートではこうだ。しかも幸華の前でしか出さないポーカーフェイスときた。史文様は兄のどこを見て左近に推薦したのか未だ謎。
「倫太郎」
「おや、これはこれは…母上ではないですか」
声がすれば千鶴さんが笑顔を張りつけてやって来た。
途端に倫太郎の顔は曇り、声のトーンは下がるので幸華は違和感を覚えた。
「ああ//倫太郎会いたかったわ。ちっとも連絡寄越さないなんて。母をなんだと思ってるの?」
「はは、すみません」
幸華を後ろに隠せばサッと前に出る。
そんな倫太郎の顔は幸華越しからは見えないが、ふと千鶴は幸華に気付けば眉間にシワを寄せる。
「まあ嫌だ、私の大切な倫太郎に不義の子が付いてるだなんて!さっさと倫太郎から離れなさい!!」
ハエを払うように扇子でシッシ!と仰ぐ千鶴さん。
幸華は謝って立ち去ろうとすれば腕を掴んだのは倫太郎だ。
「おやめ下さい母上。みっともないですよ」
「倫太郎、何を言ってるの?この子の母親がどんな女だったか知ってるでしょ?」
「幸華には関係のない話です。そんな風に虐げるのはお止め下さい」
凛とした態度の倫太郎に千鶴はブルブルと震え出した。
「まあなんてこと…倫太郎が、私の可愛い倫太郎が。私の倫太郎が穢されていく」
「……行こう、幸華」
ブツブツと何かを語る千鶴を尻目に倫太郎は幸華を連れそこを去る。すれ違いざま千鶴は物凄い剣幕でこちらを睨みつけてくれば、その恐ろしい表情にゾッとした。
会場に行けば三学年の生徒達が既に集合していた。
「で、なんでお兄ちゃん?」
「ん~?」
当日、幸華が家を出ようとすれば迎えに来たのは倫太郎。ご丁寧に衣装まで用意して持ってくるもんだから二重に着替え直す羽目になったのは言うまでもない。
「いや~この感じ懐かしいな~」
倫太郎は元一流橋高校の卒業生。
懇親会にも生徒時代に参加した経験はあるので慣れているようだが、今回は何故か幸華の同伴役として参加していた。
「史文様の護衛は?お兄ちゃん左近でしょ?」
「挨拶回りの時には同席するさ。何より今は史文様も自分の役割があるからね」
ほら、と倫太郎が指さす先には会場に入って来る史文様。隣にはエスコートされる幸舞の姿もあり、二人は美男美女同士お似合いだった。豪華な赤い着物姿で登場した幸舞はマウントのつもりなのか、史文の腕に絡みつけば周りの女子達を牽制していた。
今回の幸舞は生徒としてではなく、稀血の花嫁という立場での参加。彼女の護衛には青龍家に仕える妖に加え、白蛇の双子も狩り出されていた。
「分かりやすい子だよな~あんな着飾って鼻高々にして。後で女子に刺されないといいけど」
「なんてこと言うの…お兄ちゃん性格悪いよ」
途中、双子の兄・ハクと目が合えば「ゲロゲロ~♪」と吐きそうな顔で幸舞を指さすので慌てて止めるよう促す。
「おや?白蛇の双子か。さては幸舞、幸華の御用人だと知っての腹いせか?」
「どうかな、私に逆らう権利ないし」
「まあ稀血は妖・神にとって毒にも薬にもなるからね。何かの拍子に怪我でもされたらマズい」
稀血は嗅覚を狂わせる。
泥酔と麻薬のような作用を及ぼすせいか、花嫁は血の一滴すら流してならない。それでも神に愛された娘、誰もが羨む地位に幸舞は今いる。
「幸舞が史文様と結婚したら、幸華はお兄ちゃんが貰ってやるな!」
「何バカなこと言ってんの?兄妹だから」
倫太郎はその後、ニコニコ笑って幸華の頭を撫でていた。
今回の参加者は大きく分けて二パターン。
一つは着物姿で一つは制服。
着物姿の参加者は身分や位が高いことを意味し、妖や神、人でも九頭龍家のような家庭が対象。反対に制服姿の生徒はこの条件に合致しない至って普通の一般家庭を意味し、保護者もフォーマルなスーツ姿が大半だった。
「幸華に誕生日プレゼント取られたんだって?」
「…なんで知ってるの」
「幸舞が僕に自慢してきたんだよ。幸華に要らないから貰ったって。どう考えても噓なのに同情してやれば顔輝かせて喜んでたよ(笑)」
「…ホントお兄ちゃん、そういうとこ」
幸舞を遠目に倫太郎は笑って言いたい放題。
普段は誰の前でも紳士被る男がプライベートではこうだ。しかも幸華の前でしか出さないポーカーフェイスときた。史文様は兄のどこを見て左近に推薦したのか未だ謎。
「倫太郎」
「おや、これはこれは…母上ではないですか」
声がすれば千鶴さんが笑顔を張りつけてやって来た。
途端に倫太郎の顔は曇り、声のトーンは下がるので幸華は違和感を覚えた。
「ああ//倫太郎会いたかったわ。ちっとも連絡寄越さないなんて。母をなんだと思ってるの?」
「はは、すみません」
幸華を後ろに隠せばサッと前に出る。
そんな倫太郎の顔は幸華越しからは見えないが、ふと千鶴は幸華に気付けば眉間にシワを寄せる。
「まあ嫌だ、私の大切な倫太郎に不義の子が付いてるだなんて!さっさと倫太郎から離れなさい!!」
ハエを払うように扇子でシッシ!と仰ぐ千鶴さん。
幸華は謝って立ち去ろうとすれば腕を掴んだのは倫太郎だ。
「おやめ下さい母上。みっともないですよ」
「倫太郎、何を言ってるの?この子の母親がどんな女だったか知ってるでしょ?」
「幸華には関係のない話です。そんな風に虐げるのはお止め下さい」
凛とした態度の倫太郎に千鶴はブルブルと震え出した。
「まあなんてこと…倫太郎が、私の可愛い倫太郎が。私の倫太郎が穢されていく」
「……行こう、幸華」
ブツブツと何かを語る千鶴を尻目に倫太郎は幸華を連れそこを去る。すれ違いざま千鶴は物凄い剣幕でこちらを睨みつけてくれば、その恐ろしい表情にゾッとした。



