憂鬱な気分で校舎を出れば何やら外が騒がしい。
視線の先には女子生徒の人だかりができれば中央には幸舞の姿。

「あら、幸華じゃない」

目をつけられたら厄介。
そう気づかれないよう注意して去るつもりが見つかってしまった。幸舞は女子達を引き連れれば幸華の前までやって来る。

「どう?似合ってるかしら」

手に持つバッグはこの前の誕生日に幸華が史文から貰ったもの。幸舞は自慢げに幸華から奪い取ったバッグを見せびらかしてきた。

「流石は青龍様ね!こんな高いバッグ、一般人じゃまず買えないわ」
「そりゃあ幸舞は青龍様の許嫁なのだし当然よ!何でもない日にもこうしてプレゼントを定期的に届けてくれるのよ。愛されてる証拠ね!!」
「あら?そう言えば幸華さんは何も貰ってないのかしら?妖や神に気に入られた家は多額の援助が受けられると聞きましたのに」

あれは幸華にとプレゼントされた物であって断じて幸舞宛ではない。だがそんな事を周りが知るわけもなく、こうして姉妹で比較するとその扱いの差に幸華は自然と自分が笑い者にされているのだと気づいた。

「皆やめて!これは私のせいなの。私が稀血体質なばっかりに、幸華にはいつも嫌な思いさせちゃってたみたい。今回の幸華の誕生日も私と史文様のデートが被っちゃったせいで後回しにしたの。だから代わりにこのバッグだけでもって。史文様を説得して渡そうと思ったら余計怒らせてしまって…」

幸舞が泣きながら説明すると周りはビックリした顔をする。

「え、じゃあ幸華さんは幸舞と青龍様が許嫁同士なの分かってて嫉妬したってこと?」

その問いに幸舞が頷けば周囲はざわめく。
これでは完全に姉に意地悪した妹認定で幸華は悪者扱いだ。

「最低だよ幸華さん!幸舞は青龍様の許嫁なのよ?稀血の花嫁として愛されるのは当然なことなのに。なのに応援する訳でもなく嫉妬するなんて」
「そうよ!いくら自分の誕生日をすっぽかされたからって。どんな理由があれ、青龍様のデートを優先するのは当然のことじゃない。せめてものプレゼントにってこのバッグだって貴方に幸舞があげようとまでしていたのに…!」

いや待って…そんなメチャクチャな。
幸華は自分を責める彼女達に呆れてしまった。チラリと彼女達の陰に見えた幸舞はニヤッと笑っていれば、幸舞の自作自演劇に巻き込まれたのだと知り後悔する。

だが不意にブ~ン!と大きな音が聞こえれば正門からは一台の高級車が入って来た。助手席から出てきたのは倫太郎で後部座席のドアが開けば出てきたのは史文だった。突然の出来事に生徒達はざわめくと視線は幸華達から彼達へ移る。