青龍の華嫁 ~稀血の悪女~

火事の騒動から三日明けた今日。

「ホントに行くのか?」
「はい、そろそろ行かないと友達も心配してますし」

茶納から心配のメッセージは来ていたが無事を知らせて高校に復帰することにした。だが支度する傍ら、史文はそれを渋っていた。

「まだ犯人が見つかってないんだ。もう暫くは家にいた方がいいんじゃないか?」
「そんな事を言ってたら、史文様は永遠に外出させてくれないでしょ」
「うっ…」

図星をつかれ落胆する史文。
幸華はクスリと笑えば白蛇の双子も笑っていた。

「ご主人様、嫉妬してる~」
「嫉妬してる~」
「な、違う!ただ外は危険だし。俺は幸華に何かあったら危ないと言ってるだけで」

高校に行けば幸舞もいるのだろうか。
あれから一度も会っていないので九頭龍家がどうなっているか分からない。倫太郎が何度か実家に顔を出していたみたいだが。

「ならハク・コク、お前達が幸華を護衛しろ」
「え、双子ちゃんと一緒ですか?」
「そうだ。俺の元御用人だから妖力にも期待していい。何かあったらお前を守ってくれるだろう」

史文が指示すれば双子はポン!っと小さな白蛇の姿に化けた。

「お任せ下さい!ご主人様に代わり、俺達が幸華様を守ります」
「頼んだぞ。高校への送り迎えも青龍家の者に頼むから」

何と至れり尽くせりな。
婚約破棄後、史文は更に幸華を気遣ってくれてるように思える。

「あ、それと今度の休みは予定を空けておいてくれ。生誕会をするから」
「生誕会?」
「俺の誕生を祝う会だ。外部からも多くの妖が同席する。幸華にも出席して貰いたいんだ」

史文はニコリと微笑みながら玄関まで見送ってくれた。
白蛇の双子を首と手首に巻き付け学校に到着すれば、生徒達の視線が集中する。

「幸華ー!大丈夫だった⁇」
「おはよう茶納。心配かけてごめんね」

茶納は幸華を見れば一目散に駆け寄ってくる。
だいぶ心配させてたようで若干涙目だった。

「も~ビックリしたよ。九頭龍家が火事になったって学校側はその話で持ち切りだよ。とにかく無事で良かった」
「ホント、私もビックリしちゃった。まさか旧館に火がつくなんて」

未だ犯人が分からず油断を許さない。
クラスメイトも幸華を遠回しにチラチラと観察してくるので気まずい空気が流れた。

「よお、ようやく来たか」
「あ、鬼楽君だ!懇親会ぶりだね」
「お~…は?お、おま!なんちゅうもん巻き付けて…」
「え、何のこと?」

鬼楽は目が合うと震えながら幸華に巻き付いた白蛇達を指さした。

「あ、この子達は私の御用人で白蛇の妖。名前はコクとハクっていうの!」
「御用人?お手伝いみたいな感じ?」
「うん。史文様が貸してくれたんだ。今は九頭龍家に仕えてくれてる」

白蛇達はスルスルと首元を行き来すれば、ハクはチロチロと赤い舌を出して鬼楽達を挑発していた。

「あ、こらハク!君はまたそんな風に妖を挑発して」
「…よく平気で相手するな。鬼の俺でもひやひやすんぜ…その妖力の強さ」
「そんな強いの?」
「強いなんてもんじゃない。白蛇本来の妖力に加えて青龍の神力も混ざってる。ランク的に言えば俺と同等だぞ」
「そんな凄いの⁈」

道理でクラスメイトの妖による視線が痛いわけだ。
さっきから幸華本人というよりかは白蛇達へ向ける反応が強く怖がってるように見える。

「流石は青龍家の使い魔。あの史文様じゃ納得か。…気を付けろよ?幸舞の奴が裏で動き出してる」
「幸舞が?」
「婚約破棄されたのはお前のせいだ!って。学校中に噂が広まってんだ」
「そんな…」