史文が九頭龍家に訪れたのはそれから直ぐのことだった。
「どういう事ですか⁈」
応接室に響き渡った幸舞の声。
隣に座る千鶴は顔を引きつらせ、父は困惑した。
「そのままの意味だ。幸舞嬢、君との婚約を破棄して頂く」
午後に青龍家の訪問が入った。
そう九頭龍家へ連絡が来てからというもの、新館では彼の到着に備え急ピッチで準備が進められていた。
「遂に青龍家が幸舞と正式な婚姻を取り付けになるんだわ。よくやったわ幸舞!!」
「当然でしょ!私は稀血の花嫁、愛されて当然なんだから」
二人の笑い声が旧館まで響いてくる。
当然のように『不義の子』扱いの幸華は呼び出されることもなく、旧館で双子達とお茶をしていれば父親が訪ねてくる。
「史文様がお呼びだよ」
「史文様が?でも千鶴さん達が、」
「お前も九頭龍家の一員だろ。千鶴達が何と言おうとお前は大切な私の娘だ」
上手く動かせない左足で杖をついて歩いていく父。
九頭龍家の大黒柱とはいえ、温厚な性格故かだいぶ肩身が狭い思いをしてるよう。我が父親ながら家での立ち位置はそう高くなかった。
「来たね、コッチにおいで」
「…は?なんで幸華がここにいるの?」
応接室に行けば既に全員が揃っており、幸舞はやって来た幸舞に機嫌を悪くした。倫太郎は目が合うとニコリと微笑み、史文が手招きしてくるので隣に座る。
「全員お揃いのようなので早速本題に入ります。私は雨龍実巳。史文様の右近を務めます」
そう名乗る彼は青龍家の筆頭分家だ。
雨龍は青龍家の最初の派生であり、最も青龍家に近い分家。青みがかったブルーブラックの髪に赤い瞳でモノクルをしていた。
「本日は史文様と幸舞様の婚約破棄に関する連絡を伝えるべく参りました」
その場にいた皆が一斉に驚きを隠せず反応した。
突然の訪問に告げられたのは婚約破棄。
「な、婚約破棄ですって⁈」
「史文様、一体どういう事⁈」
「そのままの意味だ。幸舞嬢、今日で君との婚約を破棄したい」
「青龍様、今更何を…。幸舞は稀血の花嫁、それをなぜ四神が蹴ろうなど」
「今更ではない。前々から決めていたことだ」
母娘が詰め寄るも史文は至って冷静な顔をしていた。
「今や稀血の誕生で四神家は総力を上げている状況です。ですが青龍家ではその争奪戦から一戦を退くことを決断致しました」
「青龍家では稀血を娶りません。加えて幸舞の嫁ぎ先を他三家にお譲りするとのことだ」
補佐の二人が説明する中、幸華達は困惑した。
要するにそれは青龍家が九頭龍家との関係を断ち切るとも意味合いがとれる発言だ。
「今後につきましてはご安心下さい。一方的な意思決定という立場から今まで通り、青龍家は九頭龍家への援助を惜しみません」
「なんで…史文様どうして!!」
幸舞は声を荒げれば泣き崩れてしまった。
史文はそんな彼女を静かに見つめれば幸華に目をやる。
「好きな人がいる。だから君と結婚はできない」
「どういう事ですか⁈」
応接室に響き渡った幸舞の声。
隣に座る千鶴は顔を引きつらせ、父は困惑した。
「そのままの意味だ。幸舞嬢、君との婚約を破棄して頂く」
午後に青龍家の訪問が入った。
そう九頭龍家へ連絡が来てからというもの、新館では彼の到着に備え急ピッチで準備が進められていた。
「遂に青龍家が幸舞と正式な婚姻を取り付けになるんだわ。よくやったわ幸舞!!」
「当然でしょ!私は稀血の花嫁、愛されて当然なんだから」
二人の笑い声が旧館まで響いてくる。
当然のように『不義の子』扱いの幸華は呼び出されることもなく、旧館で双子達とお茶をしていれば父親が訪ねてくる。
「史文様がお呼びだよ」
「史文様が?でも千鶴さん達が、」
「お前も九頭龍家の一員だろ。千鶴達が何と言おうとお前は大切な私の娘だ」
上手く動かせない左足で杖をついて歩いていく父。
九頭龍家の大黒柱とはいえ、温厚な性格故かだいぶ肩身が狭い思いをしてるよう。我が父親ながら家での立ち位置はそう高くなかった。
「来たね、コッチにおいで」
「…は?なんで幸華がここにいるの?」
応接室に行けば既に全員が揃っており、幸舞はやって来た幸舞に機嫌を悪くした。倫太郎は目が合うとニコリと微笑み、史文が手招きしてくるので隣に座る。
「全員お揃いのようなので早速本題に入ります。私は雨龍実巳。史文様の右近を務めます」
そう名乗る彼は青龍家の筆頭分家だ。
雨龍は青龍家の最初の派生であり、最も青龍家に近い分家。青みがかったブルーブラックの髪に赤い瞳でモノクルをしていた。
「本日は史文様と幸舞様の婚約破棄に関する連絡を伝えるべく参りました」
その場にいた皆が一斉に驚きを隠せず反応した。
突然の訪問に告げられたのは婚約破棄。
「な、婚約破棄ですって⁈」
「史文様、一体どういう事⁈」
「そのままの意味だ。幸舞嬢、今日で君との婚約を破棄したい」
「青龍様、今更何を…。幸舞は稀血の花嫁、それをなぜ四神が蹴ろうなど」
「今更ではない。前々から決めていたことだ」
母娘が詰め寄るも史文は至って冷静な顔をしていた。
「今や稀血の誕生で四神家は総力を上げている状況です。ですが青龍家ではその争奪戦から一戦を退くことを決断致しました」
「青龍家では稀血を娶りません。加えて幸舞の嫁ぎ先を他三家にお譲りするとのことだ」
補佐の二人が説明する中、幸華達は困惑した。
要するにそれは青龍家が九頭龍家との関係を断ち切るとも意味合いがとれる発言だ。
「今後につきましてはご安心下さい。一方的な意思決定という立場から今まで通り、青龍家は九頭龍家への援助を惜しみません」
「なんで…史文様どうして!!」
幸舞は声を荒げれば泣き崩れてしまった。
史文はそんな彼女を静かに見つめれば幸華に目をやる。
「好きな人がいる。だから君と結婚はできない」



