隣の席のイケメンに懐かれた

それがキスだと気づいたのは、数秒後のことだった。
俺は慌てて高峰の体を押す。顔が燃えるように熱い。
高峰は俺から離れたと思ったら、俺に全体重をかけるように抱きつき、俺の肩に頭を置いた。


「ちょっ、高峰!?」


状況を把握してない俺は、とりあえず高峰の体を起こそうと高峰に触れた。


「高峰?」


俺が呼びかけても返事をしない。高峰の体が、いつもより熱い気がする。

高峰の首筋に手を当てる。


「高峰、熱ある……」


確かに、お祭りきてからなにも食べてなかった。
具合悪かったからだったのか。

高峰は俺の変化に敏感で、体調が悪かったらすぐに気づいてくれるのに……自分の無能さに腹が立ってくる。
でも、今はそんな場合じゃない。2人の邪魔をするのは申し訳ないが、緊急事態だ。
早川に電話をかける。


「ごめん早川、矢沢といるとこ申し訳ないんだけど」
『どしたの柴野。高峰となんかあった?』
「高峰が熱出しちゃって。助けてくれない?」
『わかった、すぐ行く。どこにいる?』
「茂みのとこなんだけど……わかる?」
『あぁ、あそこか。了解、今から行くよ』


早川はそう言って電話を切った。
ありがとう、早川。ごめん、早川。
心の中でそう唱える。

俺に全体重をかけて寝ている高峰の背中をさする。
高峰の体温が少しずつ上がっている。


「柴野!」


早川と矢沢が走ってこっちに向かってくる。
俺はホッとして胸を撫で下ろす。
矢沢が高峰の様子を見ると、ハァーッと息を吐いた。


「高峰、夏休み入ってからずっと部活で忙しかったみたいだったし、昨日試合終わって気が抜けたんだろうなぁ」


矢沢はそういって、高峰をおぶった。


「俺たち3人は家近いし、高峰は家まで送ってくよ」


早川は俺を安心させるように微笑んだ。俺はそれに頷く。


「ありがとう」
「ところで、柴ちゃんも顔赤くない?熱ある?」


矢沢にそう言われてドキッとする。
高峰とキスした、なんて言えない。


「いや、俺は大丈夫!」
「高峰となんかあったの?」


早川はそう言って意味ありげに笑った。気づいているのかもしれない。早川はエスパーなんじゃないかと思う。


「……なにもないよ?」
「そう」


早川はそれ以上俺になにも言わなかった。
全部が見透かされている気しかしなかった。