「桃花が俺に別れを告げられて
自分を責める予知夢を視た。
遊園地行った時も様子おかしかったから
もしかして、って思って
夢と同じ状況を再現したんだ」

「え、それって拓真も予知夢を視る家系ってこと?」

拓真は申し訳なさそうに頷いた。

「ああ。今まで黙っててごめんな」

「バカ……」

「え?」

「拓真のバカ!!夢の通りになっちゃったって
信じちゃったじゃん!!もうっ!!!」

「イテテテテ」

拓真の胸板を叩くけどビクともしない。

まさか、拓真も予知夢を視る家系で
さっきの出来事が嘘だったなんて……。

でも嘘で良かった。

あぁ、私、こんなにも別れを告げられることが
怖かったんだな。

「じーちゃんから聞いた話だけど
予知夢を視る家系の恋人同士が強く想い合うと
運命を変える力が働くらしいんだ」

「えっ、そうなの!?」

新事実に驚きを隠せない。

じゃあ、あの予知夢の運命は変えることが
できたんだね。

嬉しくて、涙が溢れそうになる。

……あれ?

「じゃあ、あそこで待ってる女の子は?」

「あいつは俺の姉貴」

「葵ちゃん?!」

なんてこった。とんだ茶番に付き合わせてしまった。

葵ちゃんはニコっと微笑んだ後バイバーイと
踵を返した。

あとで謝罪のラインを送らなくちゃ……。

「それより、桃花。
心配しなくても、俺はさよならなんて言わない。
だから予知夢よりも俺を信じてくれ」

クシャリと笑う拓真に不覚にもときめいた。

「そ、そんなに言うんなら信じてあげる」

「なんだそれ。でも、桃花らしいな」

2人ならどんな予知夢を視たって乗り越えられる。
拓真、覚悟してよね。
あんたがさよならを言わない限り、
私もさよならなんて言わないから。

繋いだ手に力を入れると、
拓真が優しく微笑み頭を撫でた。

「好きだよ、桃花」







(終わり)