「別れよう」

君はにっこり笑って私に告げた。

桜が美しい並木道で、花びらが舞い散る
桃源郷のような世界で終わりの言葉を。

「え?」

くるりと背を向けて愛しい彼女の元へ駆け寄る。

花びらだけが私に寄り添いひらひらと舞い落ちる。

待って。

私を置いていかないで……!!

手を伸ばすと視界がボヤけてぐるぐると回転した。

遠くから声が聞こえた気がした。

気のせいかな?

「……も……か……ももか……桃花!!」

目を開くと心配そうな顔をした
幼馴染の顔が近くにあった。

……。

「うわぁぁっ!!!」

額に衝撃が走り、
わたしはベッドの上を転がり悶絶する。

「いってー!桃花石頭!」

赤くなった額を押さえているのは
私の幼馴染で、彼氏の拓真。

私はまだジンジンする額を押さえながら
拓真をきっと睨みつけた。

「ってか、なんであんたが私の部屋にいんのよ!
女の子の部屋に勝手に入るなんて信じらんない!」

「はぁ?! 俺はおばさんに
桃花がうなされてて何度声掛けしても起きないって
聞いて起こしにきてやったんだぞ!
感謝するどころか怒鳴られるとはな」

「うっさい!」
あたしは枕を拓真に投げ付ける。

……あんたのドアップは心臓に悪いっつーの。
まだドキドキしてる心臓を宥めるように深呼吸する。

「てか早く着替えろよ、学校遅れるぞ」

目覚まし時計を見ると7時30分。

「ぎ、ぎゃぁぁぁぁっ!!!」

朝の住宅街に私の声が響いた。