夏休みが終わる直前。
吹部のみんなで、ファミレスに来ていた。コンクールの打ち上げのようなものだ。
しかも貸し切りでわたしたちしかいないため、みんなとてもテンションが上がっている。
「打ち上げ遅くなったけど、みんなコンクールお疲れ様! 金賞おめでとう!」
「ダメ金でしたけどね」
「もう、愛良ちゃん。マイナス思考はダメだよ!」
「……だって、三年生に申し訳ないから」
愛良先輩、そう思っていたんだ。
一年生と二年生は静まり返ったけれど、里奈先輩は首を横に振った。
「後輩たちはそんなふうに思わないでね。わたしたちは頑張ったんだから。毎年銅賞だったのに金賞取れたのはすごいことだと思う。だから今日は部活のことは忘れて、パーッと楽しもう!」
「……先輩、やっぱり部長にふさわしいですね」
「今頃気づいたのー!?」
ドッ、と笑いが起こった。
もしかして愛良先輩と里奈先輩って、意外と相性が良いのだろうか。
コンビで芸人をやるのも向いていそう、なんて思った。
「みんなお疲れー」
「お疲れ様」
「お疲れ」
「お疲れ様。楽しいね、こういう打ち上げ」
瑠夏ちゃんは誰よりも盛り上がっていて「楽しすぎるー!」と叫んだ。
それを聞いて柚乃ちゃんが「うるさい」と瑠夏ちゃんの頭をチョップする。
このふたりのやり取りも見ていて自然と笑顔になるくらいおもしろい。隣にいる絵莉ちゃんも珍しく大きく笑っていた。
「ねぇ、先輩たちの私服可愛くない? 初めて見るけど」
「え、わたしも思ってた」
「だよね!」
里奈先輩は白いワンピース、愛良先輩はカジュアルな肩出しトップスがとても似合っていた。
それを見て、可愛いと思っていた。わたしだけでなく、みんな同じ気持ちだったらしい。
「葵先輩すごく可愛い。カチューシャとかオシャレすぎない?」
「沙羅先輩のデニムかっこよすぎる! 足長くてスタイル良いし。あかり先輩もスカート似合ってる!」
「先輩みんな可愛いよね。わたしたち、先輩が推しみたいなものだもんね」
「確かに」
絵莉ちゃんの言葉に納得した。
わたしたち、思った以上に先輩たちが好きなのかもしれない。
「みんなで写真とか撮りたいなぁ」
「あー、いいじゃん! 誘ってみようよ! 沙羅せんぱーい」
わたしがそう呟くと、瑠夏ちゃんがすぐに沙羅先輩を呼び出してしまった。
「おぉ、みんな集まってどうしたの?」
「あの、うちら写真撮りたいなって話してて! ダメですかー?」
「写真ね、全然いいよ。じゃあ里奈に声掛けてみる」
「やったぁ、ありがとうございます!」
わたしの何気ない一言がきっかけで、みんなで写真を撮ることになった。
せっかくならとパート順で並ぶことになり、わたしは端で愛良先輩の隣だ。
「あたし写真写り悪いから、本当は写真嫌なんだけど」
「そうなんですか? 先輩可愛いから大丈夫ですよ」
「そんなわけないでしょ。こころは可愛いからいいけどさー」
実際、先輩モテると思うんだけど。
けれど先輩は自分があまり好きではないのか褒められてもそんなに嬉しくなさそう。
わたしと同じで容姿や性格よりも、トランペットの上手さを褒められることのほうが嬉しいのかもしれない。
「はーい、じゃあみんな、撮るよー! 部員全員の記念撮影だから、笑顔でねー!」
「はーい!」
里奈先輩がスマートフォンを固定し、店員さんに撮ってもらうことになった。
里奈先輩は愛良先輩の隣に並ぶ。
「うわ、最悪。顔小さい人が隣じゃん」
「えぇ、それわたしのこと?」
「先輩以外に誰がいるんすか。もうー、あたし絶対顔丸く見える」
「あははっ、愛良ちゃんてばおもしろい」
ふたりの会話に、わたしも思わず噴き出してしまう。
「じゃあいきまーす。はい、チーズ!」
シャッター音が聞こえた。
そのあとも何枚か撮り、里奈先輩がグループに写真を送ってくれた。
女子も男子もみんな笑っていて、最高の瞬間を写真にできて良かったと思った。
「じゃあそろそろ解散にしようか。あまり遅くなっても良くないし。みんなお迎えとか呼ぶ人は呼んでね! もう外は暗いから気をつけて帰ってね」
さすが部長。最後まで部員を気遣ってくれる。
……次に先輩たちや部員みんなに会うのは、三年生引退の部活。
そう思うと、胸がぎゅっと詰まるような寂しさに襲われた。
「里奈、先輩」
「こころちゃん。どうしたの?」
わたしは勇気を絞り出し、口を開く。
「ふたりで写真、撮っていただけませんか?」
後輩から先輩をふたりで写真を撮りたいなんて誘うのは図々しいと分かっている。
でも、撮らないと後悔する気がしたから。
「ツーショ? いいよ、嬉しい」
「え、本当ですか?」
「もちろん。じゃあわたしが撮るね」
「ありがとうございます!」
やっぱり、里奈先輩は優しい。
自撮りをしてくれる先輩に、わたしは顔を近づける。
「ありがとうございました。大切に保存します」
「こちらこそ! じゃあまた部活のときに」
「お疲れ様でした」
里奈先輩に挨拶をし、先程ふたりで撮った写真を見た。
先輩とのツーショットは、絶対に忘れない宝物にしようと思った。
吹部のみんなで、ファミレスに来ていた。コンクールの打ち上げのようなものだ。
しかも貸し切りでわたしたちしかいないため、みんなとてもテンションが上がっている。
「打ち上げ遅くなったけど、みんなコンクールお疲れ様! 金賞おめでとう!」
「ダメ金でしたけどね」
「もう、愛良ちゃん。マイナス思考はダメだよ!」
「……だって、三年生に申し訳ないから」
愛良先輩、そう思っていたんだ。
一年生と二年生は静まり返ったけれど、里奈先輩は首を横に振った。
「後輩たちはそんなふうに思わないでね。わたしたちは頑張ったんだから。毎年銅賞だったのに金賞取れたのはすごいことだと思う。だから今日は部活のことは忘れて、パーッと楽しもう!」
「……先輩、やっぱり部長にふさわしいですね」
「今頃気づいたのー!?」
ドッ、と笑いが起こった。
もしかして愛良先輩と里奈先輩って、意外と相性が良いのだろうか。
コンビで芸人をやるのも向いていそう、なんて思った。
「みんなお疲れー」
「お疲れ様」
「お疲れ」
「お疲れ様。楽しいね、こういう打ち上げ」
瑠夏ちゃんは誰よりも盛り上がっていて「楽しすぎるー!」と叫んだ。
それを聞いて柚乃ちゃんが「うるさい」と瑠夏ちゃんの頭をチョップする。
このふたりのやり取りも見ていて自然と笑顔になるくらいおもしろい。隣にいる絵莉ちゃんも珍しく大きく笑っていた。
「ねぇ、先輩たちの私服可愛くない? 初めて見るけど」
「え、わたしも思ってた」
「だよね!」
里奈先輩は白いワンピース、愛良先輩はカジュアルな肩出しトップスがとても似合っていた。
それを見て、可愛いと思っていた。わたしだけでなく、みんな同じ気持ちだったらしい。
「葵先輩すごく可愛い。カチューシャとかオシャレすぎない?」
「沙羅先輩のデニムかっこよすぎる! 足長くてスタイル良いし。あかり先輩もスカート似合ってる!」
「先輩みんな可愛いよね。わたしたち、先輩が推しみたいなものだもんね」
「確かに」
絵莉ちゃんの言葉に納得した。
わたしたち、思った以上に先輩たちが好きなのかもしれない。
「みんなで写真とか撮りたいなぁ」
「あー、いいじゃん! 誘ってみようよ! 沙羅せんぱーい」
わたしがそう呟くと、瑠夏ちゃんがすぐに沙羅先輩を呼び出してしまった。
「おぉ、みんな集まってどうしたの?」
「あの、うちら写真撮りたいなって話してて! ダメですかー?」
「写真ね、全然いいよ。じゃあ里奈に声掛けてみる」
「やったぁ、ありがとうございます!」
わたしの何気ない一言がきっかけで、みんなで写真を撮ることになった。
せっかくならとパート順で並ぶことになり、わたしは端で愛良先輩の隣だ。
「あたし写真写り悪いから、本当は写真嫌なんだけど」
「そうなんですか? 先輩可愛いから大丈夫ですよ」
「そんなわけないでしょ。こころは可愛いからいいけどさー」
実際、先輩モテると思うんだけど。
けれど先輩は自分があまり好きではないのか褒められてもそんなに嬉しくなさそう。
わたしと同じで容姿や性格よりも、トランペットの上手さを褒められることのほうが嬉しいのかもしれない。
「はーい、じゃあみんな、撮るよー! 部員全員の記念撮影だから、笑顔でねー!」
「はーい!」
里奈先輩がスマートフォンを固定し、店員さんに撮ってもらうことになった。
里奈先輩は愛良先輩の隣に並ぶ。
「うわ、最悪。顔小さい人が隣じゃん」
「えぇ、それわたしのこと?」
「先輩以外に誰がいるんすか。もうー、あたし絶対顔丸く見える」
「あははっ、愛良ちゃんてばおもしろい」
ふたりの会話に、わたしも思わず噴き出してしまう。
「じゃあいきまーす。はい、チーズ!」
シャッター音が聞こえた。
そのあとも何枚か撮り、里奈先輩がグループに写真を送ってくれた。
女子も男子もみんな笑っていて、最高の瞬間を写真にできて良かったと思った。
「じゃあそろそろ解散にしようか。あまり遅くなっても良くないし。みんなお迎えとか呼ぶ人は呼んでね! もう外は暗いから気をつけて帰ってね」
さすが部長。最後まで部員を気遣ってくれる。
……次に先輩たちや部員みんなに会うのは、三年生引退の部活。
そう思うと、胸がぎゅっと詰まるような寂しさに襲われた。
「里奈、先輩」
「こころちゃん。どうしたの?」
わたしは勇気を絞り出し、口を開く。
「ふたりで写真、撮っていただけませんか?」
後輩から先輩をふたりで写真を撮りたいなんて誘うのは図々しいと分かっている。
でも、撮らないと後悔する気がしたから。
「ツーショ? いいよ、嬉しい」
「え、本当ですか?」
「もちろん。じゃあわたしが撮るね」
「ありがとうございます!」
やっぱり、里奈先輩は優しい。
自撮りをしてくれる先輩に、わたしは顔を近づける。
「ありがとうございました。大切に保存します」
「こちらこそ! じゃあまた部活のときに」
「お疲れ様でした」
里奈先輩に挨拶をし、先程ふたりで撮った写真を見た。
先輩とのツーショットは、絶対に忘れない宝物にしようと思った。



