暗い会場の客席に、わたしたちは座った。
ドクン、ドクンと心臓の鼓動が聞こえる。
全ての学校の演奏が終わり、ついに結果発表の時が来た。
部長と副部長は盾と賞状を貰うため、舞台に並んでいる。
「もうすぐだね、結果発表」
「そうだね」
「ウチ、緊張しすぎてやばいかも」
「わたしも」
絵莉ちゃんも柚乃ちゃんも瑠夏ちゃんも、みんな緊張しているようで安心した。
わたしは愛良先輩から貰ったお守りを見て、深呼吸をする。
「大丈夫。こんなに頑張ったんだから。絶対……絶対大丈夫だよ」
「……そうだよね」
「どんな結果でも、わたしたちは頑張ったもんね」
「そうだね! あとは結果を待つだけ!」
すると、ステージに大人の男性が何名か出てきた。
もう、始まる。
「それでは、結果発表に参りたいと思います。金賞と銀賞が聞き取りにくいということがありますので、金賞の場合頭に“ゴールド”を付けさせていただきます」
そのあと、すぐに発表されていく。
確か一番の学校は、わたしたちと同じ市内のところだったはず。
「一番、坂浦市立柳高等学校。銀賞」
順調に発表されていき、銅賞や銀賞が続いたあと。
「ゴールド金賞」
プログラムナンバー六番の高校で、ゴールド金賞が発表された。
叫び声が会場に響く。相当嬉しいんだろうなということが伝わった。
ゴールド金賞は、そのあともいくつか発表された。そのたびに歓声が響き渡り、わたしは緊張が高まった。
……ついに、わたしたちの番が来た。
「十六番、坂浦市立奏和田高等学校」
わたしは手を合わせる。
……神様、どうかお願いします。
大丈夫、大丈夫、大丈夫……!!
「ゴールド金賞」
「わぁぁぁっ!!」
隣にいた絵莉ちゃんが胸に飛び込んできた。
気づかないうちに涙が頬に垂れてくる。
……信じられない。
本当に、金賞を受賞できたんだ。
「こころ……っ」
「あいら、先輩」
「やったね、金賞だよ」
「はい……! って、先輩、泣いてますか?」
愛良先輩の目には、涙が溜まっているように見えた。
「な、泣いてなんか……! こころこそ」
「だって、嬉しくて……目標を達成できたんですね」
「……そうだよ。やったんだよ、あたしたち」
わたしは頷いた。
ステージ上で盾を受け取った里奈先輩の笑顔は、こちらに向いている気がした。
「それでは、支部大会へ推薦される代表校を、演奏順に発表させていただきます」
……来た。
支部大会に出場できるかどうか、これで決まる。
「六番」
六番の高校の、歓声が響く。
会場内に先程と同じ緊張感が溢れ出ているようだ。
そのあともいくつかの高校が発表され、十四番の高校が呼ばれたあと。
「十八番」
……一気に、どん底に落とされた気がした。
わたしたちは、代表にはなれなかった。
いわゆる“ダメ金”だったのだ。
「……っ」
周りを見ると、絵莉ちゃんは涙を流していて、他の子も唇を噛みしめ、泣いている子も多かった。
すると「悔しい」と声が聴こえて、振り向くとその声は愛良先輩だった。
「悔しい……っ!! なんでよ、あたしたちはあんなに頑張ったのに……!」
「愛良、わたしも悔しい。あかりとのソリあんなに頑張ったのにっ」
「わたしも。愛良ちゃんのソロも良かったし、葵ちゃんとのソリはめちゃくちゃ練習したのに」
愛良先輩と葵先輩とあかり先輩が、抱き合って涙を流していた。
わたしも自然と、涙が溢れて止まらない。
……こんなの、つらいよ。悲しいよ。残酷だよ。
鼻の頭がじーんと熱くなる。
「一年、二年のみんな!」
突然、愛良先輩がそう呼びかける。
「来年は絶対、金賞代表取ろう! 目標は支部大会出場!」
来年。
その言葉に、わたしは少しだけ心が明るくなる気がした。
来年また頑張る。今年よりも頑張って、支部大会に出場するんだ。
今年目標を達成できたのだから、わたしたちはきっとできる。
「はい!」
帰りのバスの空気は、地獄のような空気だと言っても過言ではなかった。
三年生はほぼみんな、泣いていた。ただ里奈先輩だけが涙を流していなかった。
きっと我慢しているんだ。誰よりも悔しいに決まっているのに、部長が泣いてしまったらみんながもっと悔しくなるって分かっているから。
「みなさん、注目してください。今回の結果は素晴らしいと思います。みなさんの努力があって、目標の県大会で金賞を受賞できました。自分を褒めていいと思います」
須田先生が、そう話し始めた。
「でも、みなさんはこれでは満足しないんですよね?」
わたしたちは静かに頷く。
「では先程松嶋さんも言っていたように、来年は支部大会出場を目指しましょう! そして三年生のみなさん。今日まで本当に頑張ってきたと思います。今度三年生に感謝を告げる引退式を部活でやります」
「須田先生、ありがとうございます。みんな、泣かないで! わたしたちは目標を達成できたんだから!」
里奈先輩が明るく笑顔でそう言った。
その言葉に、わたしたちは笑って「はい!」と答えた。
窓から見える夜空の景色はとても美しく、切なくなりながらも見惚れてしまっていた。
ドクン、ドクンと心臓の鼓動が聞こえる。
全ての学校の演奏が終わり、ついに結果発表の時が来た。
部長と副部長は盾と賞状を貰うため、舞台に並んでいる。
「もうすぐだね、結果発表」
「そうだね」
「ウチ、緊張しすぎてやばいかも」
「わたしも」
絵莉ちゃんも柚乃ちゃんも瑠夏ちゃんも、みんな緊張しているようで安心した。
わたしは愛良先輩から貰ったお守りを見て、深呼吸をする。
「大丈夫。こんなに頑張ったんだから。絶対……絶対大丈夫だよ」
「……そうだよね」
「どんな結果でも、わたしたちは頑張ったもんね」
「そうだね! あとは結果を待つだけ!」
すると、ステージに大人の男性が何名か出てきた。
もう、始まる。
「それでは、結果発表に参りたいと思います。金賞と銀賞が聞き取りにくいということがありますので、金賞の場合頭に“ゴールド”を付けさせていただきます」
そのあと、すぐに発表されていく。
確か一番の学校は、わたしたちと同じ市内のところだったはず。
「一番、坂浦市立柳高等学校。銀賞」
順調に発表されていき、銅賞や銀賞が続いたあと。
「ゴールド金賞」
プログラムナンバー六番の高校で、ゴールド金賞が発表された。
叫び声が会場に響く。相当嬉しいんだろうなということが伝わった。
ゴールド金賞は、そのあともいくつか発表された。そのたびに歓声が響き渡り、わたしは緊張が高まった。
……ついに、わたしたちの番が来た。
「十六番、坂浦市立奏和田高等学校」
わたしは手を合わせる。
……神様、どうかお願いします。
大丈夫、大丈夫、大丈夫……!!
「ゴールド金賞」
「わぁぁぁっ!!」
隣にいた絵莉ちゃんが胸に飛び込んできた。
気づかないうちに涙が頬に垂れてくる。
……信じられない。
本当に、金賞を受賞できたんだ。
「こころ……っ」
「あいら、先輩」
「やったね、金賞だよ」
「はい……! って、先輩、泣いてますか?」
愛良先輩の目には、涙が溜まっているように見えた。
「な、泣いてなんか……! こころこそ」
「だって、嬉しくて……目標を達成できたんですね」
「……そうだよ。やったんだよ、あたしたち」
わたしは頷いた。
ステージ上で盾を受け取った里奈先輩の笑顔は、こちらに向いている気がした。
「それでは、支部大会へ推薦される代表校を、演奏順に発表させていただきます」
……来た。
支部大会に出場できるかどうか、これで決まる。
「六番」
六番の高校の、歓声が響く。
会場内に先程と同じ緊張感が溢れ出ているようだ。
そのあともいくつかの高校が発表され、十四番の高校が呼ばれたあと。
「十八番」
……一気に、どん底に落とされた気がした。
わたしたちは、代表にはなれなかった。
いわゆる“ダメ金”だったのだ。
「……っ」
周りを見ると、絵莉ちゃんは涙を流していて、他の子も唇を噛みしめ、泣いている子も多かった。
すると「悔しい」と声が聴こえて、振り向くとその声は愛良先輩だった。
「悔しい……っ!! なんでよ、あたしたちはあんなに頑張ったのに……!」
「愛良、わたしも悔しい。あかりとのソリあんなに頑張ったのにっ」
「わたしも。愛良ちゃんのソロも良かったし、葵ちゃんとのソリはめちゃくちゃ練習したのに」
愛良先輩と葵先輩とあかり先輩が、抱き合って涙を流していた。
わたしも自然と、涙が溢れて止まらない。
……こんなの、つらいよ。悲しいよ。残酷だよ。
鼻の頭がじーんと熱くなる。
「一年、二年のみんな!」
突然、愛良先輩がそう呼びかける。
「来年は絶対、金賞代表取ろう! 目標は支部大会出場!」
来年。
その言葉に、わたしは少しだけ心が明るくなる気がした。
来年また頑張る。今年よりも頑張って、支部大会に出場するんだ。
今年目標を達成できたのだから、わたしたちはきっとできる。
「はい!」
帰りのバスの空気は、地獄のような空気だと言っても過言ではなかった。
三年生はほぼみんな、泣いていた。ただ里奈先輩だけが涙を流していなかった。
きっと我慢しているんだ。誰よりも悔しいに決まっているのに、部長が泣いてしまったらみんながもっと悔しくなるって分かっているから。
「みなさん、注目してください。今回の結果は素晴らしいと思います。みなさんの努力があって、目標の県大会で金賞を受賞できました。自分を褒めていいと思います」
須田先生が、そう話し始めた。
「でも、みなさんはこれでは満足しないんですよね?」
わたしたちは静かに頷く。
「では先程松嶋さんも言っていたように、来年は支部大会出場を目指しましょう! そして三年生のみなさん。今日まで本当に頑張ってきたと思います。今度三年生に感謝を告げる引退式を部活でやります」
「須田先生、ありがとうございます。みんな、泣かないで! わたしたちは目標を達成できたんだから!」
里奈先輩が明るく笑顔でそう言った。
その言葉に、わたしたちは笑って「はい!」と答えた。
窓から見える夜空の景色はとても美しく、切なくなりながらも見惚れてしまっていた。



