それから3ヶ月後レイさんは俺とも慣れて何とか指導が出来るようになった。



そこから俺の剣術の上達は凄まじいものだった。
「今日の練習は終わりです」



「ありがとうございました」



「それじゃあ…」



「また明日!」



「はい!また明日!」



にこっと微笑みバイバイと手を振るレイさんに手を振り返し俺も森を後にする。



村の宿に着くと宿の前にゆぴぴが待って居た。
「どう?あれから」



「順調だよ」



「そっか…」



「…?」



「いや、なんでもない!早く食堂行ってご飯食べよっ!」



「…そうだな」



一緒に居れないことを不安にさせて居るのだろうか。



ヤキモチを妬いているのだろうか?どうしたらゆぴぴは笑ってくれるのか考えていると気付けば食堂へと着いていた。



食堂に入ると賑やかな雰囲気が流れているはずの店内が静かだった。



「「…?」」



「なんだ…?」



「すみません…ちょっとしたトラブルがこざいまして本日の営業は終了となります」



「…じゃあ、何処か近くの食事処知らないかな?これじゃ今日の晩ご飯が食べられない」



「えっと…ここから3件右隣に食堂がありますよ」



「そっかそっか!ありがとう」



俺達はそのまま店を去るフリをして店内の様子を窓から覗く。



客はトラブルだというのに誰一人帰ろうとせず何をするでもなく何事も起こらないまま時が過ぎる。



「ご飯、食べに行こ…明日見に行こうよ」



ゆぴぴがお腹空いたとアピールをする。



「分かった、行こう」



そして翌日俺はゆぴぴと共に昨日の食堂に来ていた。



何か話し声が聞こえて耳を澄ますと



「まだまだか…」



「本当に何体創ればアイツは気が済むんだよー」



聞き覚えのある声がして窓から覗くとそこには先日の少年が居た。



「あの子…!」



ゆぴぴも気付いたのか声が上がる。



「ま、それも昨日の客達と今日の分合わせればアイツも満足するだろ」



「それもそうか」



「昨日の客で何をするつもりなの?」



気付けばゆぴぴが食堂の扉を開け敵に向かって居た。



「あっ…おい!」



制止の声も聞こえていないようで



「どういうことなの?」



物凄い血相で敵を怒鳴るゆぴぴに俺も負け静かに見守る。



「なんだ君達か」



と相手は俺達を見て鼻で笑いながら仲間との談笑に花を咲かす。



「ちょっと!聞いてるの!?」



ゆぴぴが一体何にそんなに怒っているのかは分からないが俺はゆぴぴの逆鱗に触れないように尚且つ敵に向かって剣を構える。



「雑魚がギャーギャーうるせぇなぁー?」



少年が立ち上がりゆぴぴを投げ飛ばす。



「…ぐぁっ!」



壁に叩きつけられたゆぴぴはそのまま座り込む。



「最初から大人しくしてろよ」



「待て」



「あ?」



「可愛い女の子投げ飛ばすのはダメだろ」



「お前こーゆータイプか?」



「…っ今はそんな話してない」



「いや、してるだろ」



仲間割れをしている間にゆぴぴは回復魔法をかけるとすぐさま立ち上がり俺の元へ来た。



「ね、このまま放っておくのは不味いよね」



とゆぴぴは言う



「いつか結界が無くなればコピーと本物が共存する事になる」



と俺が答えると



「じゃあ、目を閉じてて」



と言う。



「何で?」



と聞き返すがゆぴぴはそのまま無視して呪文を唱える。



俺はゆぴぴの言う通りに目を閉じた。



半目で見てみようかとも思ったがバレるのも怖い。



「何でそんな力あんだよ!」



「聞いてねぇぞ!」



そんな情けない声を辺りに響かせて少年と男性の声が聞こえなくなる。



「ゆぴぴさんもういいですか?」



「うん。もういいよ」



ぱちっと目を開け辺りを見渡し敵が居なくなっている事を確認する。



「いつ居なくなった?」



「秘密だよ」



「気になるよ。なぁ、アイツ死んだのか?申し訳ないよ…まだあの少年は子供だ」



「生きてるよ…逃げられた」



「そっか…」



「うん…帰ろっか!」



「そうだな」



そして食堂の扉を開けるとそこには恐れていた事が起きていた。



「結界を見張ってたカイリーン村長が!」



「結界を破られ倒されただと!?」



村の人の話し声が現状を知らせる。



「助けに行こう」



「あぁ!」



そして森へとたどり着くと



「あ、やっと来たぁ〜」



先程の顔ぶれプラススライムのような化け物がいた。



「合体行くぞ」



男性が少年に声をかける。



「おぅ!」



少年が男性の呼び掛けに応えると指をパチンと鳴らした



途端に2人の身体がドロドロと溶けて行きスライムと合体した。



「な…っ!」



「キモ…」



ゆぴぴが思わず汚い言葉遣いをする。



「何固まってるんだい!?早く村長を助けるよ!」



非那月が後から来てスライムに攻撃する



「「はい!」」



非那月の呼び掛けに応えながら俺達もスライムへ攻撃する。



「クソ…ッ」



「これすばしっこい!」



「…それどころかコイツ修正してないかい?」



「「……」」



非那月の言う事は認めたくは無いが確かにスライムは攻撃が当たると自身で再生し自身を強くしていた。



「これ…キリが無いじゃないか…」



「「………」」



もう誰も喋らなくなってしまった。



「クヒヒ…もう終わりかぁ?」



スライムの中へと呑まれた男性の声が俺達を煽る。



「遅れて…ごめんなさい!」



「「レイさん!」」



俺と非那月が同時に名を呼ぶ中ゆぴぴの顔が真剣な眼差しになる。



遅れて来たレイさんに俺は状況を説明をする。



「分かった…ちょっといい?」



「どうしたんです?」



「作戦が…あるの…」



そう言ってレイさんは俺達に作戦を耳打ちで伝える。



(ゆぴぴさんと非那月さんでアイスメンブレインを打ってください、私とフウタさんは剣術でトドメを刺す…これが一番良いと思うんです)



「アイスメンブレイン!」



ゆぴぴと非那月がアイスメンブレインで敵を何重にも包み込む



「あっ!動けない!」



「やられましたか…」



「行きましょう!レイさん!」



「うん!」



「「やああああぁぁっ!!!」」



俺とレイさんでトドメを刺すべくスライムに剣を振りトドメを刺す。



「お疲れ様、フウタ君」



レイさんが笑顔で俺に話しかける。



「お疲れ様です」



「フウター!」



ゆぴぴが俺に抱きつき頬に唇が当たる。



顔がかあっと赤くなっていそうな気配を感じながら俺は気にしないフリをするので精一杯だった。



「…」



ゆぴぴと目が合う。



「どうした?」



「……ううん、何でもない」



先程の光景を見てしまったのかちょっと拗ねているように見えたので後でたっぷり甘やかそうと決める。



「村長…」



レイさん、非那月さんが村長の側で膝を付き手当てをする。



「私も手伝います」



ゆぴぴも村長に回復魔法をかける。



だが、村長がその日目を覚ます事は無かった。



数日後村長が目覚めたとの知らせを受けて俺はゆぴぴと村長の元へ向かう。



「村長!」



「村長さん!」



「おぉ、フウタ君、ゆぴぴさん」



「良かった…」



「あぁ、元気そうで良かったです」



「私もお2人が元気そうで何よりですよ」



カイリーン村長が元気そうで安心したのも束の間でカイリーン村長のお気に入りと思われるお付きの人が病室の扉をノックする。



「はい」



「失礼します」



扉が開くとお付きの人は村長に耳打ちで話し出す。



「そうか…」



「はい…それでは失礼致しました」



お付きの人が帰るとカイリーン村長は口を開いた。



「先日の2人組の正体が分かった」



「「「「!?!?」」」」



「誰なんです?」



ゆぴぴが問う。



「隣町のヒューイと闇夜という名の人だ」



「今その人達は?」



「スライムと共に…」



「「……」」



「まぁ、2人共奴隷の下っ端だろう…特定される事を前提にしてたんだろうな」



「それでも、して来た事を許す事は出来ません!私のフウタを危険な目に合わせた奴は何があろうと許せません!」



「ゆぴぴ…」



「…そうだね、僕も彼らは許せない」



「……」



だが、誰にももう何も出来ないのも皆分かっていたのだろうそれ以上会話が生まれる事は無かった。