君の声は甘く優しく、募る想いは切なく苦しく

繰り返された問いのあとで、抱きしめていた腕が離される。後頭部に添えられていた手が離れると、自然と吉野の視線は上を向いて、佐渡の顔で止まった。

困っているのか、それとも面白がっているのか、まだ怒っているのか、ただ笑っているのか、やっぱりよくわからない。
わからないから、伝えたあとの佐渡の反応を、最悪の方向に予想してしまう。
拒絶や嫌悪を浮かべた佐渡の顔が脳内を満たしてしまったら、吉野にはもう伝えることなんて出来なかった。

ふるふると首を横に振って佐渡から視線を外し、「言えない……」と震える声で呟く。佐渡にもその声は聞こえていたはずだけれど、返ってくる声はなかった。

静かな室内に、時計の秒針の音がやけに大きく響く。
しばしお互いに何も言わず、沈黙の時間が流れる。その沈黙が吉野には居たたまれなくなってきたころ、佐渡が自嘲気味に笑った。


「俺はほんと世那に甘いな……」


ぽんっと頭に手が乗って、そのままぽんぽんと弾ませるように撫でられる。
世那、こっち見て。と佐渡の声がして、吉野はびくっと肩を揺らしたあとで、それでも言われた通りに顔を上げる。