君の声は甘く優しく、募る想いは切なく苦しく

放課後の図書当番の日が被れば一緒に帰ったり、たまに二人で買い物に出かけたり、長期の休みにはどちらかの家で宿題をしたり。
そんなささやかで幸せな日常が、今終わりを迎えようとしている。
吉野に気持ちに気が付いて、きっと佐渡は気持ちが悪いと思っただろう。今までそんな気持ちで自分の隣にいたのかと、嫌悪しただろう。

苦しくて、胸が痛くて、泣きたくて、唇をぎゅっと噛みしめて堪えていたら、「世那」と呼ぶ声がした。
恐る恐る顔を上げると、佐渡がこちらを見つめていた。


「世那は誰のことが好きなの?」


誰って……――、それだけ心の中で呟いて、吉野はふるふると首を横に振る。
ずっと言わないつもりだったから、言えなくてもいいと思っていたから、例え佐渡に気付かれていたとわかった今でも、そんなに簡単には口に出せない。


「ダメだよ世那、ちゃんと言って」


けれど佐渡は、それを許してはくれなかった。

もう泣き虫は卒業したと思っていたのに、目にじわじわと涙が溜まっていくのを感じる。
泣きたくないのに、溜まった涙は許容量を超えて溢れ出す。