君の声は甘く優しく、募る想いは切なく苦しく

今、佐渡は何と言った?

心臓が、嫌な感じに音を立て始める。いつも佐渡といる時のように、甘く疼くようなドキドキではなくて、止めを刺される直前のような、目の前に刃を突き付けられているような、そんな感じ。

暑いわけでもないのにふき出して来た汗が、背中を伝っていく。
固まったままの吉野をじっと見つめて、佐渡が口を開く。


「それとも、あの子のことが好きなの?俺よりも」


そんなことあるわけがないし、そうではないのだ。それに佐渡が“あの子”と呼んでいる山上が好きなのは、吉野ではなく佐渡の方だ。
でも、伝えたい言葉は喉で引っかかって出てこない。かろうじて、震える声で「ち、ちが……」と言ってみたけれど、あとが続かなかった。

佐渡は怒っている。なぜ怒っている?わからない。それに、ずっと秘めていた佐渡への想いもバレている。なぜ?わからない。
ここからどうしたらいいのかわからない。何を言えばいいのかわからない。佐渡が何を考えているのか、なぜ怒っているのかわからない。

わからなくて、頭の中がぐるぐるして、心臓も嫌な感じに鼓動を速めていて、背中を伝う汗が気持ち悪い。