君の声は甘く優しく、募る想いは切なく苦しく

「猫でも犬でもないですし、飼い主って誰のこと言ってるんですか」


佐渡は吉野と目を合わせて、それからちょっぴり意地悪く笑う。


「さて、誰のことだろうね」


これ以上は佐渡のからかいスイッチが入ってしまうので、吉野は聞き流すことでその話題から逃げた。
あの顔は絶対に、吉野が“飼い主”で真っ先に誰を思い浮かべたかに気が付いている。


「ところで世那」


名前を呼ばれて、体がぴくっと反応する。


「さっきの子とは、ここで何をしてたの?」

「……相談、というか。まあ、色々」

「色々?色々って?」


色々は色々です、と押し通そうとしても、きっと佐渡は良しとしてくれないのだろう。わかっているけれど、言えないことだってある。

山上が佐渡を好きだという部分を上手く隠して話せればいいのだが、生憎と吉野にその技術はない。
それに、同じクラス、同じ学年にすら友達のいない吉野が、異性の後輩から恋愛相談を受けているだなんて、佐渡が引っかからないはずがない。
だから、「色々です」とか「大したことじゃありません」ととにかく誤魔化すしかないのだけれど、そうしていると次第に佐渡から不機嫌そうなオーラが漂い出す。
口元は笑っているのに、目はちっとも笑っていなくて、なんだか怖い。