君の声は甘く優しく、募る想いは切なく苦しく

「でも、今にも泣きそうだったのはほんと。久しぶりに見たよ、吉野くんのあんな顔」


目元に触れていた指が口元へと下りてきて、吉野の下唇をなぞる。


「ここ、赤くなってるよ。強く噛んだでしょ」


何も言えずに俯く吉野の頭に佐渡は手を乗せ、優しく撫でる。
まるで、小さい子供にするみたいに。


「ダメでしょ、俺以外に泣かされたら」


何を言っているんだと思った。佐渡にだって泣かされたくはない。そもそも、泣いてない。
でも、吉野は浮かんでくる言葉を何一つ口には出さなかった。今はただ、頭を撫でる佐渡の手の優しさに、浸っていたかった。


「なんか、猫みたいだね。今にもごろごろ喉鳴らしそう」


そう言って笑った佐渡だったが、「ああでも」と思い出したように難しい顔をする。


「犬っぽいところもあるんだよね。ぶんぶん振ってる尻尾が見える時があるっていうか、全力で飼い主の元に駆けてくる感じがあるっていうか」


うーん、悩ましい……。なんて呟いて本気で悩む佐渡を、だいぶ気持ちの落ち着いた吉野はジト目で見上げる。