吉野が返事をしていないから、山上の用事はまだ終わっていないのだが、先輩であり想い人である佐渡を相手にダメとは言えないのだろう。
山上は前回とほとんど同じように「あ、あの、はい、その……大丈夫です!失礼しました」と叫ぶように残して、逃げるように教室を飛び出して駆けて行った。
その後ろ姿が見えなくなるまで見送った佐渡は、吉野に視線を移すとため息をつく。
「なんて顔してんの、世那」
前にも聞いたなその台詞と思いながら、吉野は「なんて顔……?」と呟く。
やっぱり自分は、酷い顔をしているのだろう。このくすぶった気持ちが表情に表れてしまったのだとしたら、佐渡には見られたくなかったなと思っていたら
「泣きそうな顔してる」
そう言って佐渡が、まるで涙を拭うみたいに優しく吉野の目尻に触れた。
目元に触れる佐渡の指に、その優しく拭うような動きに、吉野の中でぐるぐると渦巻いていた嫌なものが、黒くて暗くて醜いものが、すうっと小さくなっていく。
「……泣いてないです」
目元に触れる指を拒みはしない、でも言葉では伝えておく。佐渡は笑いながら「今はまだね」と返した。
山上は前回とほとんど同じように「あ、あの、はい、その……大丈夫です!失礼しました」と叫ぶように残して、逃げるように教室を飛び出して駆けて行った。
その後ろ姿が見えなくなるまで見送った佐渡は、吉野に視線を移すとため息をつく。
「なんて顔してんの、世那」
前にも聞いたなその台詞と思いながら、吉野は「なんて顔……?」と呟く。
やっぱり自分は、酷い顔をしているのだろう。このくすぶった気持ちが表情に表れてしまったのだとしたら、佐渡には見られたくなかったなと思っていたら
「泣きそうな顔してる」
そう言って佐渡が、まるで涙を拭うみたいに優しく吉野の目尻に触れた。
目元に触れる佐渡の指に、その優しく拭うような動きに、吉野の中でぐるぐると渦巻いていた嫌なものが、黒くて暗くて醜いものが、すうっと小さくなっていく。
「……泣いてないです」
目元に触れる指を拒みはしない、でも言葉では伝えておく。佐渡は笑いながら「今はまだね」と返した。



