君の声は甘く優しく、募る想いは切なく苦しく

吉野が何も答えないことを不安に思ったのか、山上がそうっと顔を上げる。そして、目を見開いて固まった。
きっと自分は今、山上が驚いてしまうほど酷い顔をしているのだろうなと思ったら


「吉野くん」


後ろから鋭い声で名前を呼ばれた。
振り返った吉野を見て、廊下に立っていた佐渡がハッとしたような顔をする。


「何してるの」


常にない佐渡の鋭い声は、二人へというよりも、主に山上へと向けられている。
それを本人も感じているのだろう、「あ、えっと、その……」と山上はしどろもどろになる。ちらちらと吉野に向けられる視線を感じられるが、吉野も何と言っていいのかわからない。
それに、苦しいのと、ぐるぐると色んな感情が巡っているのとで、思考がまとまらない。

吉野が黙って佐渡を見つめていると、伸びてきた手が、吉野の手を掴んで引っ張った。
よろよろと、吉野は引っ張られるままに佐渡の方へと進む。


「悪いんだけど、用があって吉野くんを探してたんだよね。そっちの用が終わったなら、もういい?」