予想していたのは、佐渡への告白の手助けだったけれど、流石に相手が自分のことを知らない状態で告白に踏み切るほど、山上は勢いで突き進んでいるわけではないらしい。

まずは自分を知ってもらって、顔と名前を覚えてもらって、それから徐々に仲良くなって、二人きりでお出かけとかするようになって、ゆくゆくは……――。

吉野は、自分の想像に自分で苦しくなって唇を噛みしめる。

山上は知らない。吉野もまた彼女と同様に、いや彼女よりももっとずっと前から、佐渡に想いを寄せていることを。

自分の方が前から好きだったからなんて、恋愛において好きでいた長さが関係ないことくらいわかっている。なんなら、自分の方がずっと相手を想っているなんて、気持ちの大きさすらも関係ないのだ。
選ぶのは佐渡で、そして吉野は、選ばれることは決してない。