山上はとても熱く語ってくるが、吉野はまるでぴんと来ない。

きっと山上は吉野と同じように、佐渡の姿を無意識に探してしまったり、見付けると目で追ってしまったりするのだろう。
その過程で山上には、他の人と吉野への対応に違いがあるように見えたのかもしれないが、吉野自身は自分が特別だと感じたことは一度もなかった。


「だからこそ、先輩にお願いしたいんです！特別仲良しの先輩に、どうしてもご協力いただきたいんです！！」


山上の真っすぐな気持ちが、自分の目的を達するために突き進む強さが、吉野には眩しい。眩しくて、羨ましくて、自分の中にどす黒い感情が湧き上がって来るのを感じる。
とても嫌なものが、どろどろとした醜いものが、吉野の中に広がっていく。

そんな自分も、山上の真っすぐさも、何もかもが嫌だった。


「お願いします！先輩と仲良くなるために、私に協力してください」