ぼーっとしてしまっていた吉野は、慌てて言われた通りに、雪崩落ちてこなかった本を押さえる。そこに佐渡は、抱えた本を一気に押し込んだ。
もちろん手を挟めないように、吉野の手と佐渡の手の分の余裕は持たせて。

本を押さえる吉野の手の甲に、本を抱えた佐渡の手の甲が触れる。
先ほどの余韻もあって危うくまたドキッとしそうになったが、その前に佐渡がすっと手を抜いたことで事なきを得た。


「よし、あとはここに残りのやつを……」


床に残していた残りの数冊を、佐渡が拾い上げる。


「先輩、そんな風に無理やり押し込んだらまた雪崩が起きます」


佐渡は、ぐいぐいと力任せに本を押し込んでいる。


「だって入らないから」

「だとしたら、どこか別の棚の本が混ざってるんじゃないですか?適当にここに入れられたやつがあるかもしれないので、ちゃんと見ながら入れてください。……ていうか、どうせ入れるなら順番通りに入れてください。何ですかこの、一巻五巻三巻七巻二巻って……」

「もちろん、手に取った順」


なにが“もちろん”だ。そうだろうなとは思ったけれど、そこは戻す時に並べ替えるべきだろう。仮にも図書委員ならば。