最初の“わかりました”は一体なんだったのかと思うような声のボリュームに、吉野は深く息をつく。
そして、人が通りかかった時のことを考えて、ここは話しだけでも聞くことにした。でなければ、この調子でずっと“お願いします!”と声を張り上げる気だろう。

ひとまず話を聞くことを伝え、ついでに再度声のボリュームを落とすよう伝えるが、嬉しそうな山上の「はい!」という返事が廊下に景気よく響いた。


「えっと、ここじゃちょっとあれなので、場所を移しませんか?近くに空き教室とかないですかね」


生徒玄関前であれだけ堂々と吉野に協力を要請しておいて、今更廊下じゃ話しづらいと言うのか。あの時に比べて人の姿もないというのに。
だが、山上がまたいつ声のボリュームがおかしくなるかわからないので、人目につかない場所に移動したいのは吉野も一緒だった。