「……先輩、俺そろそろ教室に戻ります」
これ以上佐渡と一緒にいると、嬉しい気持ちよりも苦しさとか辛さが上回ってしまいそうだ。
立ち上がった吉野を、佐渡が「世那」と呼び止める。
その呼び方は反則だ。足が自然と止まってしまうし、心臓が喜ぶみたいに跳ねる。
「会いに来てくれてありがとう世那、嬉しかったよ」
ああ……そんな風に、優しく微笑まないでほしい。胸がきゅっとなるような、そんな笑顔で見つめないでほしい。とても大切なものみたいに、名前を呼ばないでほしい。
期待してしまう。希望を抱いてしまう。ダメだと、そんなことあるわけないと、わかっているのに。
「じゃあ、またね」
ひらりと佐渡が手を振る。それを受けて吉野は、「失礼します」とぼそぼそ言って頭を下げると、足早に図書室を出た。
廊下で一人になってもまだ、高鳴り出してしまった心臓は煩くて、吉野は胸に手を当てて深く息を吐く。落ち着け、と言い聞かせる。
それでも高鳴った鼓動は収まらなくて、吉野はそんな自分に呆れてため息をついた。
これ以上佐渡と一緒にいると、嬉しい気持ちよりも苦しさとか辛さが上回ってしまいそうだ。
立ち上がった吉野を、佐渡が「世那」と呼び止める。
その呼び方は反則だ。足が自然と止まってしまうし、心臓が喜ぶみたいに跳ねる。
「会いに来てくれてありがとう世那、嬉しかったよ」
ああ……そんな風に、優しく微笑まないでほしい。胸がきゅっとなるような、そんな笑顔で見つめないでほしい。とても大切なものみたいに、名前を呼ばないでほしい。
期待してしまう。希望を抱いてしまう。ダメだと、そんなことあるわけないと、わかっているのに。
「じゃあ、またね」
ひらりと佐渡が手を振る。それを受けて吉野は、「失礼します」とぼそぼそ言って頭を下げると、足早に図書室を出た。
廊下で一人になってもまだ、高鳴り出してしまった心臓は煩くて、吉野は胸に手を当てて深く息を吐く。落ち着け、と言い聞かせる。
それでも高鳴った鼓動は収まらなくて、吉野はそんな自分に呆れてため息をついた。



