「あ、確か学年も違うんだっけ。向こうはぴかぴかの一年生か。じゃあどうして吉野くんは、あの子と一緒だったの?」

「ちょっと頼まれごとをされていただけです」

「別に仲良しでもなんでもない先輩の吉野くんに頼み事?」


なんだかやけにしつこいなと思いながら、吉野は「そうですね」と答える。
先輩に彼女がいるのかどうかを知りたいそうです、とここで言ってしまえば早いのだろうが、結局引き受けずに終わった彼女の頼みごとを引き受けたような構図になるのはなんだか嫌だった。

それに、万が一そこで“いるよー”と答えられたら、あの女子より先に吉野が傷つくことになる。
ああでも、きっといずれは傷つくことになるのだろうから、だったら早い方がいいのかもしれないとも思う。
どうしたものかと吉野が悩んでいると、突然目の前に佐渡の顔が現れた。


「っ……!!?」


突然視界に飛び込んで来た顔と、その近さに吉野は驚いて息を呑む。


「きゅ、急に目の前に出てこないでください!びっくりするじゃないですか」

「だって、何回も呼んでるのに返事してくれないから」


その言葉に、また驚く。呼ばれていたことに全く気が付かなかった。