例え遊ばれているだけだって、好きな人のそばにいられるのなら、それは幸せと呼んでいいだろう。
でも、佐渡といられることに幸せを感じているだなんて本人に悟られるわけにはいかないから、吉野は努めて平静を装って歩き出す。


「吉野くん、今日は帰ったら何するの?」

「宿題ですね。そのあと読書します」

「せっかく学校から解放されたのにまだ勉強するの?」

「先輩、宿題の意味わかってます?というか、ちゃんと宿題やってます?」


佐渡からは、返事の代わりに大変いい笑顔が返ってくる。


「吉野くんさ、放課後は遊びたいなーって思わないの?」

「遊ぶ相手がいませんから」


別に今更それで傷ついたりはしないが、わざわざ言わせないでほしい。


「同性はそうだとして、女子は?例えばさっきの子達とか」

「さっきの?」


あの、佐渡のことを好きであろう女子と、おそらくその友人であろう女子達のことだろうか。