君の声は甘く優しく、募る想いは切なく苦しく

「そういうわけなので、先輩にしか頼めないんですよ!お願いします!!」


彼女が吉野にぐいぐい迫る度、後ろの女子達がおろおろしている。
止めたいが、止めても止まらないからどうしよう、どうしたらいいんだろう。という気持ちが、もれなく全員の顔に表れていた。それにプラスして、うちのが本当にすみません!という気持ちも。

彼女が勢いよく頭を下げる動きに、熱のこもった声に、廊下を行きかう人達が何事かとチラ見したり、どうしたのかと振り返ったりして視線が集まる。
当の本人は真っすぐに吉野を見ているため気がついていないが、吉野からは自分達に向けられる周りの視線がよく見えている。

一年生の女子に頭を下げられている状況というのは、周りからはどんな風に思われているのだろう。
ひょっとして、下げられているのではなく、吉野が頭を“下げさせている”ように見えているのだろうか。それは、物凄く困る。
万が一にも、これで尾ひれの付いたよくない噂が広がって、それが原因でクラスに居づらくなったりしたら堪らない。