“いつもご親切に道を教えてくれて”という言葉に、背後にいた女子達が「あんた先輩にまでご迷惑を!」とざわつく。
何度か校内で迷っているところに出くわして場所を教えたことがあり、図書室でも顔を合わせたことがあり、なんなら今日の昼休みにも本を借りに来たその女子の名前が、吉野はどうしても思い出せない。苦手であるがゆえに、脳が覚えようとしていないのかもしれないが。
昼間に貸し出し帳に名前を書いてもらった時にも確かに見たはずなのに、思い出そうとするとなぜだか佐渡の顔が浮かんでくる。
それに引っ張られるようにして、佐渡に後ろから抱き着かれたことも。
思い出してまた心臓が高鳴りそうになったので、吉野はぐっと下唇に力を込める。
元々眉間に皺が寄っていたことも相まって怒っているように見えたのか、後方の女子達はびくっと肩を震わせたが、一人吉野の前に飛び出している方の女子は、全く気にする様子がない。
「あの、昼休みに図書室で、……さ、佐渡先輩とご一緒でしたよね」
何度か校内で迷っているところに出くわして場所を教えたことがあり、図書室でも顔を合わせたことがあり、なんなら今日の昼休みにも本を借りに来たその女子の名前が、吉野はどうしても思い出せない。苦手であるがゆえに、脳が覚えようとしていないのかもしれないが。
昼間に貸し出し帳に名前を書いてもらった時にも確かに見たはずなのに、思い出そうとするとなぜだか佐渡の顔が浮かんでくる。
それに引っ張られるようにして、佐渡に後ろから抱き着かれたことも。
思い出してまた心臓が高鳴りそうになったので、吉野はぐっと下唇に力を込める。
元々眉間に皺が寄っていたことも相まって怒っているように見えたのか、後方の女子達はびくっと肩を震わせたが、一人吉野の前に飛び出している方の女子は、全く気にする様子がない。
「あの、昼休みに図書室で、……さ、佐渡先輩とご一緒でしたよね」



