君の声は甘く優しく、募る想いは切なく苦しく

真っすぐ家に帰ったら先に宿題をするか、それとも昼休みにほとんど読めなかった本を読んでから宿題をするか、どちらにしようかと考えながら、吉野は賑やかな放課後の廊下を生徒玄関に向かって歩く。
やはりやることを先にやってしまった方が、ゆっくり読書が出来るかと結論が出たところで、靴箱の前に女子生徒が数人集まって何やら真剣な顔で話し込んでいるのが見えた。

通れないことはない。それに通らなければ靴が履き替えられない。
少しだけ歩調を緩めて、ぶつからないように横を通り抜けようとしたところで


「あ、吉野先輩!」


声がして、集団の中から女子が一人、吉野の前に飛び出して来た。
それが誰だかわかった瞬間、突然のことだったので、今度は堪える間もなく眉間に皺が寄った。


「お疲れ様です先輩!今日のお昼ぶりですね。あ、それとこの間、多目的室の場所を教えてくださってありがとうございました!いつもご親切に道を教えてくれて感謝しています」