君の声は甘く優しく、募る想いは切なく苦しく

「……俺がどう思っているのかは、さっき言おうとしたのに先輩が遮ったんでしょ」

「さっき?……ああ、“先輩と後輩”ね。だって、そんな表向きな答えを聞きたいわけじゃないから」

「……表も裏もないですよ」

「本当に?」


お腹に回されていた佐渡の腕に、きゅっと力がこもる。
吉野の背中に顔を埋めるために丸めていた背中を伸ばすと、佐渡の顎が吉野の肩に乗った。

顔が、とても近い。耳元で、佐渡の声がする。
鼓動が早過ぎて、吉野はおかしくなりそうだった。


「世那にとって俺は、本当にただの先輩?」


心臓が煩過ぎて、上手く頭が回らない。それでも必死に、どう答えるのが正解なのかを吉野が考えていると、不意に肩から重みが、背中から温もりが遠ざかった。


「残念、時間切れ」


ちっとも残念そうじゃない、むしろ楽しそうな佐渡の声のあとで、図書室に予鈴が響き渡った。