「吉野くんって、いつ見ても一人だもんね。移動教室の時も、休み時間も。ひょっとしてお昼も?」

「先輩には関係ないことですから。手伝う気がないんだったら、せめて邪魔しないでもらえますか」


話しかけられると気が散る。

本の貸し出しだけでなく、乱れた本の並びを直したり、紛失している物がないかリストを見ながら確認したり、その合間に修繕が必要な物がないかも見るのが図書委員の仕事だ。
二人一組で当番制なのだが、約一名はまるでやる気がない。


「まあ吉野くんは、基本仏頂面だからね」


あはは、なんて軽い調子で佐渡が笑う。

別に仏頂面をしているつもりはないのだが、確かにあまり表情筋は仕事をしていないかもしれない。
つまらなそうとか、怒ってるの?などと言われることが昔から多かった。


「つまり、吉野くんの可愛さを知っているのは俺だけと」


なぜだか嬉しそうにそう呟いて、佐渡が思い付いたように「そうだ!」と声を上げる。