君の声は甘く優しく、募る想いは切なく苦しく

ノートに書かれた学年は一年で、一年生ならば最初の内は校内で迷っても仕方がないかと思えるが、それにしたって迷い過ぎでは?いつからこの校舎はそんなに複雑な造りになったんだ?というくらい、吉野は迷っている彼女に出くわす。

書き込み終えたノートとペンが返ってきたところで、書き込みに不備がないかの確認を行って吉野が顔を上げると、女子生徒が目の前の吉野とは違うものをぼんやりと見つめていることに気が付いた。
あの……と吉野が声をかけると、女子生徒はハッとしたように本を受け取ってぺこりと頭を下げ、足早に図書室を出ていく。
女子生徒がハッとする直前に見ていたのは、吉野の後方。振り返るとそこには、佐渡がいる。


「吉野くん、立ち上がる時はそう言ってくれないと。背もたれに頭ぶつけちゃったよ」

「利用者対応が優先なので。そもそも、寄りかかっている先輩が悪いです」


後頭部をさすりながら立ち上がった佐渡は、吉野に覆いかぶさるような格好でカウンターに片手をついてノートを覗き込む。