君の声は甘く優しく、募る想いは切なく苦しく

「そういえば、最近柔軟剤変えた?」

「いつものやつがなかったから、似たような香りの別のやつを買ったって母が言ってました」

「やっぱり。似てるけど、いつもと違うなーって思ってたんだ」

「……違いますか?俺には同じ匂いに感じるんですけど」

「まだまだだね、吉野くんは」


そう言って、佐渡は笑う。

佐渡が最後に吉野に抱き着いて世那吸いをしたのは、佐渡が中学三年の時だった。
受験勉強の合間に、「癒しが欲しいー」と騒いで、吉野に抱き着いて掃除機のごとく吸っていた。
その頃にはもう、吉野は佐渡に想いを寄せていたから、嬉しさと恥ずかしさでおかしくなりそうだった。

あれ以来佐渡が世那吸いをすることはなくなったが、今でも吉野が同じ柔軟剤を使い続けていることにどうやら気が付いていたらしく、それが恥ずかしい。


「前のも、今のも、俺の好きな香り」


知っている。だって、佐渡の好きな香りを選んだのだから。

そんな秘めた思いは伝わらずとも、佐渡が喜んでくれるのが嬉しくて、嬉しくなってしまう自分が恨めしい。