君の声は甘く優しく、募る想いは切なく苦しく

「嬉しい?」


答えはわかっていると言わんばかりの自信ありげな問いかけに、吉野は平静を装って「別に」と答える。
それを聞いて佐渡は、可笑しそうに笑った。


「吉野くん、表情がいつにも増してきつくなってるよ。嬉しい時は嬉しいって顔しなきゃ」

「別に嬉しくないからこういう顔なんです。用がないならカウンターを塞がないでください」

「吉野くんに会いに来たんだよって言ってるのにー」


これ以上佐渡の相手をしていても埒が明かないと、むしろ相手をするだけ佐渡を楽しませてしまっている気がすると、気が付いたところで吉野は読書へと戻る。
けれど目の前に佐渡がいると思うと集中出来なくて、目が文字の上を滑ってしまう。

ページを捲る速度が明らかに落ちた吉野を、佐渡はしばらく楽しそうに眺めていた。


「……先輩、いつまでそこにいるつもりですか」


いつまで経っても視界の端に佐渡の姿があるので、吉野は我慢出来なくなって顔を上げる。


「いつまでも。吉野くんがそこにいる限り」


やめろ喜ぶな!その言葉に深い意味なんてない、遊ばれているだけだ。ただの暇つぶしだ。
跳ねそうになる心臓を強く律して、吉野はどうにか「ふざけたこと言わないでください」と返す。