君の声は甘く優しく、募る想いは切なく苦しく

昼休みに図書室で読書をするようなタイプでもないし、そもそも図書室は静か過ぎて眠たくなるとか言っていたし、調べものというわけでもないだろう。そこまで勤勉な人間ではない。
となると、現在図書室を利用している誰かに用があって訪ねて来たのか、図書当番の時に読んでいた漫画本でもカウンター内に忘れたか。

一応自分の周りを見回してみる吉野に、佐渡が不思議そうに首を傾げる。


「どうしたの?吉野くん。急にきょろきょろして。何か落とした?」

「いえ、先輩が忘れ物を取りに来た可能性があるので、それを探して」


吉野の回答に、佐渡は可笑しそうにくすっと笑う。


「なるほど。優しいね、吉野くんは。でも、忘れ物じゃないから探さなくていいよ」


一応探しはしたけれど、まあそうだろうなとは思っていた。

佐渡は、適当そうに見えて意外とそういうところはきちんとしている。もしくは、抜かりがないとも言える。忘れ物をしたり無くし物をしたりということが、ほとんどない。
どちらかというと吉野の方が、そういう抜けは多い。