「やっほー、吉野くん」


聞こえた声に顔を上げると、カウンターの向こうに佐渡が立っていた。


「借りますか、返却ですか」


どちらも違うだろうなとは思いつつ、吉野は図書委員としての仕事に忠実に問いかける。
昼休みの図書室、本日図書当番の吉野は時折利用者の様子を窺いつつ、カウンター内で読書をしていた。


「吉野くん、仕事中に読書は感心しないなー」

「……仕事中にカウンター内で堂々と居眠りしている人に言われたくありません」

「だって図書室って静か過ぎて眠くなるんだもん」


そんなのは理由にならないし、だとしたらなぜ図書委員になったのかと吉野は思う。
もちろん、思うだけで口にはしないけれど。


「それで、何の用事ですか」

「用がないと来ちゃいけないの?」

「用がなければ来ないでしょ、先輩みたいな人は図書室には」