君の声は甘く優しく、募る想いは切なく苦しく

「夕飯前なので、どれも遠慮しておきます。施錠は先輩の役目でしたよね。それじゃあ俺は、お先に失礼します。お疲れ様でした」


頭を下げて、下げた頭を上げるとほぼ同時に歩き出す。
佐渡に背を向けてカウンターの方へ。そこで自分のカバンを手にすると、今度はドアの方へ。
一度も振り返ることなく、吉野は図書室を出た。

佐渡に握られた手が熱い。頬も熱い。なんなら耳も熱い。

気付かれてはいないだろうか。いや、きっと大丈夫だ。
一緒にいるのを嬉しいと思っていることだけならばまだ気付かれてもいい。けれど、なぜ一緒にいると嬉しいのか、吉野が佐渡にどんな想いを抱いているのか、それは本人には絶対に気付かれてはいけない。

ふう……と一つ息を吐いて、吉野は足早に図書室から離れた。

一人図書室に残された佐渡は、遠ざかっていく吉野の足音を聞きながら、「ああ、なんて可愛いんだろう世那は」と機嫌よさげに呟きつつ、施錠前のお約束、室内に誰もいないことを確認するための見回りを行った。