君の声は甘く優しく、募る想いは切なく苦しく

「……先輩、そろそろ返却本の片づけをしないと、下校時間に間に合わなくなりますけど」


それとなく進言してみると、佐渡が振り返ってカウンターに置いてある時計の方に視線を走らせる。


「あ、ほんとだ。もうそんな時間か。吉野くんと一緒だと時間があっという間に過ぎちゃうな」


楽しい時間はあっという間に過ぎるとよく言うけれど、それはそういうことだと思っていいのだろうか。


「なあに?嬉しそうな顔しちゃって」


カウンターの方を向いていた顔が、いつの間にか吉野の方を向いていて、にやにやというかにまにまというか、意地の悪そうな笑みを浮かべている。


「してません、そんな顔」


心の中は確かに嬉しい気持ちで満たされたけれど、顔に出していたつもりはない。
きっとカマをかけて、吉野の反応を見て楽しむ魂胆だったのだろうが、そうはいかない。


「ああもうほんと、そういうところが堪んない」


吉野に言っているというよりは、独り言みたいなテンションで呟いて、佐渡が今日一番嬉しそうな笑顔を浮かべる。