君の声は甘く優しく、募る想いは切なく苦しく

「その言い方は教えてくれないやつですよね」


恥ずかしさに耐えて吉野が名前を呼んだところで、佐渡はきっと満足そうに笑うだけで、教えてくれはしないのだ。
“教えてあげたくなっちゃうかも”とは言ったけど、“教えてあげる”なんて言ってないよ?などと言って。
ついでに、その言葉でしてやられたことに気が付いた吉野を見て楽しむ魂胆なのだ。吉野には、既にそこまで見えている。


「決めつけはよくないよ。俺はこれでも吉野くんの可愛さには弱いんだから」

「とてもそんな風には見えませんけど」


何となくいつもの気安い会話が出来る雰囲気が戻ってくる。
あとは鼓動を速める原因となっている距離感をどうにか出来ればいいのだが、脇ががら空きでいつでも逃げられた時よりも距離が近くなっているせいで、簡単には脇をすり抜けることが出来ない。
佐渡に体をぶつけながら無理矢理通り抜けようと思えば出来ないことはないけれど、そんなことをしたら今度はどんな要求をされるかわからない。