「帰りに、たこ焼き食べに行こうか。バッティングセンターの近くにキッチンカーがいるの知ってる?あそこのたこ焼き、美味しいんだって」


クレープは一体どうしたのだろう。そんなことを思いながら、吉野は無意識に手を伸ばす。

差し出された佐渡の手は、男らしく骨ばってはいるけれど、指がすらりと長くて綺麗だ。
その手に、自分の手を重ねる。佐渡の手の温もりに、自分の無意識の行動にハッとした吉野だったが、我に返った吉野が手を引くより先に、佐渡がその手を握って力強く引き上げた。


「ああ、でも、ハンバーガーもいいかもね。昔はよく、二人で学校帰りに行ったし」


昔なんて言うけれど、ほんの数年前の話だ。佐渡も吉野も、まだ中学生だった時の話。
その頃から既に吉野は、佐渡が近くにいるとドキドキして、名前を呼ばれるだけで胸が高鳴っていた。


「吉野くんは、何が食べたい?好きなもの、言ってみて」


好きなもの……――思わず心に浮かんだものを慌てて消し去ると、吉野は握られた手をほどいて言った。