君の声は甘く優しく、募る想いは切なく苦しく

「俺のこと呼ぶ時は、とびっきりの笑顔でお願いね」

「……とびっきりの……笑顔……?」

「そう、“とびっきりの”笑顔」


なんだその注文は。先ほど、“自然に名前が呼べるチャンスを”などと言っていたのに、普段笑わない吉野が笑顔で名前を呼ぶのは、どう考えたって不自然だ。

吉野が拒否しようとすると、それより先に佐渡が続ける。


「吉野くんの笑顔、可愛いから好きなんだよね」


続いたその言葉に、吉野は不覚にもドキッとした。

“好き”というのはあくまで笑顔のことであって、吉野本人を指しているわけではない。そんなことはわかっている。わかっているから、平常心!と自分に強く言い聞かせる。
それでも、一度高鳴った心臓はそんなに簡単に収まってはくれなくて、ドキドキと鼓動が加速していく。


「俺のために笑ってよ。――ねえ、世那」

「……っ」


とっても大切なものを扱うみたいに、優しくそっと名前を呼ばれる。反応を面白がるいつもの意地の悪い笑みではなくて、愛おしげにも見える笑顔を向けられる。

これだから、勘違いしてしまうのだ。期待してしまうのだ。諦めようにも、諦められないのだ。
その声で名前を呼ばれるのが、その笑顔が、堪らなく好きだから。