君の声は甘く優しく、募る想いは切なく苦しく

「吉野くんだって、昔みたいに呼びたいでしょ、俺のこと。“佐渡先輩”って呼ぶの、本当は距離を感じるから嫌なんだよね?」


見透かしたような顔で、全部わかってるよと言わんばかりの自信たっぷりの口調で、佐渡が言う。


「でも、今更急には呼び方を戻せない。それに俺が“吉野くん”って呼ぶから、ちょっぴり意地になってるところもある。そんな吉野くんに、自然に名前を呼べるチャンスをあげないとって思って」

「……自然」


むしろ不自然極まりないと思うのだが、それを指摘したところで、佐渡の大変よく回る口に勝てる気はしない。最終的には吉野が言い負かされるのだ。負かされる以前に、勝負にもならない。

吉野は色んなものをぐっと飲み込んで、諦めの気持ちで息を吐く。
佐渡がそうして欲しいと言うから、先輩がそう言うのだから仕方なく、そういう建前で、自分にそう言い聞かせて、ドキドキし始めた心臓に、だから静まれと念じる。

吐いた息を今度は吸い込んで、息を整えて、吉野は口を開く――