君の声は甘く優しく、募る想いは切なく苦しく

「この度は、先輩を傷つけるようなことを言って――」

「違うよ、世那」


謝罪を口にしながら下げかけた頭が、中途半端な位置で止まる。
遮った佐渡は、困った子だなと言いたげな表情で吉野を見ていた。


「違うでしょ。俺はさっき、なんて言った?」

「……さっき?」


“さっき”とは、いつのことを言っているのだろう。佐渡が言っていたことを頭の中に色々と思い浮かべてみるが、どれのことだかわからない。
吉野が首を傾げると、佐渡はしょうがないなと言わんばかりで口を開く。


「昔みたいに、“ゆうくん”って呼んでって言ったでしょ」


そういえば、そんなことを言われたような気がする。いや、うん、佐渡は確かに言っていた。
脈絡がなさ過ぎてよくわからなくて、頭からすっかり飛んでいたけれど。


「俺はね、謝ってほしいんじゃないよ。傷ついたから、慰めて欲しいの」

「……それと名前を呼ぶことと何の関係が?」

「吉野くんが、昔みたいに可愛く俺の名前を呼んでくれたら、元気になれるから」


そう言って、佐渡が笑みを浮かべる。意味がわからなくて、吉野は困惑顔で首を傾げる。