君の声は甘く優しく、募る想いは切なく苦しく

そんな吉野を見下ろして、機嫌良さそうに笑って


「ねえ吉野くん、昔みたいに“ゆうくん”って呼んでよ」


佐渡は言った。


「……何でですか」


呼びたくないわけではない。でも、今更呼ぶのは恥ずかしい。

佐渡をそんな風に呼んでいたのは、たぶん小学生くらいまでだ。いや、中学に入りたての頃も呼んでいただろうか。定かではないが、呼ばなくなって久しいことは確かだ。
それに佐渡だって、昔はいつも“世那”と呼んでいたのに、いつの頃からか“吉野くん”と呼ぶようになった。
そして時折、からかうみたいに“世那”と呼ぶのだ。

たまにしか呼ばれないと、その呼び方がなんだか特別なものみたいに感じてしまって、名前を呼ばれるだけで喜ぶみたいに胸が高鳴ってしまうから困る。

佐渡が吉野を“吉野くん”と呼ぶから、吉野もそれに合わせるように、どこか意地になるように、“佐渡先輩”と呼んでいるところはある。


「俺は、吉野くんに冷たく突き放されて、お前には関係ないって言われて、すごく悲しかった。ショックだった。そんな俺が、可哀そうだと思わない?」


とてもむちゃくちゃなことを言われているような気がするのは、きっと気のせいではないはずだ。