君の声は甘く優しく、募る想いは切なく苦しく

「なんか今回戻すやつ多くない?」


佐渡が、吉野の横からカゴを覗き込んで言う。


「たぶんですけど、みんな返却されてきた本を戻さずに溜めておいたんじゃないですか。一冊とか二冊とかしかない時は、そうやって置いておくこともあります」

「なるほど、そうやってみんなが溜めに溜めた結果、数十冊まで増えたと。まったく、職務怠慢だよ。図書委員ともあろうものが」

「……先輩が言いますか」


むしろ委員長がこんな風だから、他の委員もよくない影響を受けているのではなかろうか。


「貸して、俺が持つ」


吉野の横から手を伸ばし、佐渡が自分の方へとカゴを掴んで引き寄せる。その時、カゴを持っていた吉野の手に佐渡の手が触れて、吉野の心臓が小さく音を立てた。


「……ありがとう、ございます」


こんな些細なことに心臓が高鳴った恥ずかしさで、吉野は思わず視線を逸らしながらお礼を口にする。
佐渡はなぜか機嫌よく笑って、「どういたしまして」と返した。

カゴを持つ佐渡と、そこから本を取って棚に戻して行く吉野。二人で棚の間を歩いている間は、もちろん無言というわけもなくて。