君の声は甘く優しく、募る想いは切なく苦しく

「お待たせ、吉野くん」


にこっと笑う佐渡を、吉野はジト目で迎える。


「遅いので、来ないのかと思いました」


今日の放課後の図書当番は吉野と佐渡のペアなのだが、時間通りに吉野が図書室を開けても、最初の利用者である山上がやって来て本を選んで手続きをして退出するまでの間にも佐渡は来なくて、そこから更に数十分経ってようやくやって来た。

それも、遅刻していることなど微塵も感じさせない様子で。


「ごめんね吉野くん、寂しい思いさせて」

「……寂しいとかじゃありませんから。ただ、先輩が当番をサボるつもりなのかと思っていただけで」

「吉野くんと一緒の当番の日を、俺がサボるわけないでしょ」


佐渡は、心外だと言わんばかりに言い返す。


「吉野くんと一緒にいられる時間を、俺はこんなに大切にしているのに」

「だったら時間通りに来てください。図書室の鍵を開けるのは、本来ならペアのうち学年が上の方の役割なんですよ」


おかげで今日吉野は、一旦三階の図書室まで来てから、一階の職員室に鍵を取りに行くはめになったのだ。