一体何の話をしているのか、何を聞かされているのか、吉野は困惑の表情でしばらく山上を見つめた後で、思い出したように広げていたノートに視線を戻す。


「先輩が図書委員だってもっと早く知ってたらな……。来年の委員会決めで図書委員になったって、その頃にはもう先輩は卒業してるじゃないですか、意味ないですよ」


はあ……と深いため息をつく山上に、吉野はくるっとノートを回してペンと一緒に差し出す。


「ここに、名前とクラスを――」

「了解でーす」


吉野が言い終わるより先にペンを受け取った山上は、ノートを自分の方に引き寄せて書き込んでいく。

放課後の図書室に元気よく乗り込んで来た山上は、室内を見渡して佐渡の姿がないことに残念そうにため息をついたが、そのまま立ち去ることもなく律義に本を借りて行こうとしていた。