「……いい、のかな。俺が勝手に好きでいる分には」


佐渡が何を考えているのかはまるでわからないけれど、拒絶されなかったということは、吉野が勝手に想っている分にはいいということなのだろうか。
今まで通り、決して口には出さずにひっそりと想いを募らせている分には、許されるのだろうか。

――「頑張って俺を、世那のものにしてみせて」


「ゆうくんを、俺のに……」


無意識に呟いた言葉にハッとして、自分で言って恥ずかしくなって、吉野は机に突っ伏した。

久しぶりに呼んだその名前に、胸がきゅうっと切なく疼く。

佐渡の名前を呼ぶたびに恥ずかしそうにしている山上も、いつもこんな気持ちなのだろうか。
佐渡の名前を口にするだけで、その顔を思い浮かべるだけで、好きの気持ちが大渋滞で胸がいっぱいになる。

痛くて苦しいのではなくて、胸がいっぱいで苦しい。

思わず、はあ……っと吐いたため息は、悩ましげで、ちょっぴり苦しくて、隠し切れない愛おしさが含まれていた。