佐渡のあれは一体、どういう意味だったのだろう。その前にも、何やら意味ありげなことを言っていたけれど。

あれは、期待してもいいやつなのだろうか。いや、そんなわけがない。
でも、吉野の気持ちを知っているような言いぶりのあとのあの台詞は、期待してもいいのではないだろうか。いやいや、相手は佐渡だ。人をおちょくって遊ぶような男だ。

それでも、あれは…………。

頭の中でぐるぐると、期待したい気持ちと、それはダメだと否定する気持ちが回っている。
立てた教科書に隠れるようにして、吉野は悩ましい気持ちをため息と共に吐き出した。

佐渡が何を考えているのかわからない。何を思ってあんなことを言ったのかがわからない。そこにどんな意味が込められているのかわからない。
あるいは、何の意味もないのだろうか。ただ、いつものようにからかっただけなのか。

わからない。わからないことが苦しい。でも、はっきりさせるのは怖い。