君の声は甘く優しく、募る想いは切なく苦しく

――「ねえ世那、頑張って俺を、世那のものにしてみせて」

思い出したら心臓が高鳴ってしまって、顔が熱くなってきて、吉野は慌てて教科書を立てて顔を隠す。

午後一番の歴史の授業は睡魔との戦いに敗れる者が続出し、あちらこちらで舟をこいだり、完全に机に突っ伏していたり、不動の姿勢で目を閉じたりしている。
そのため、吉野が突然教科書を立てようと、そこに顔を隠すように低い姿勢になろうと、誰も気にする者はいない。
教師ですら、最早諦めたように黒板に向かって語り掛けながらチョークを動かしている。

いつもならそんな中でも、吉野は真面目に黒板を板書したり、教師の説明の声を聞いたりするのだが、今日はとても授業に集中出来そうになかった。
しようとは思っているのだ。実際最初の方は集中出来ていた。でも、ふとした瞬間に佐渡の声が、悪戯っ子みたいな笑顔が脳内に蘇って、吉野の集中力を奪っていく。