君の声は甘く優しく、募る想いは切なく苦しく

本気で言い争いをしているようにも見えるが、よくよく聞けば、川居は海斗の部屋を訪れていて、海斗は川居から服を借りているようなので、これは喧嘩するほど仲がいいと言うあれで間違いないだろう。だから佐渡は、あえて止めには入らない。
二人が言い合うのはいつものことでもあるので、他のクラスメイトも全く気にしていないし。

そんな二人を横目に、佐渡はまた昼間の吉野のことを思い出して、一人頬を緩めていた。

もしも吉野が、佐渡と夫婦みたいだと言われたら、一体どんな反応をするのだろう。恥ずかしそうに赤くなるだろうか、川居と海斗のように咄嗟に“そんなわけない”と言い返すだろうか。
なんにしても、可愛い反応を見せてくれることは間違いない。

俺達って夫婦みたいだよねと自分で言ってみてもいいが、ここは第三者から言ってほしい。自分達はそんな風に見えているのだと吉野に思ってほしい。きっとその方が、面白い反応が見られるだろう。

そんなことを考えながら機嫌よく笑みを浮かべていると、「おい」と呼ぶ声がした。
見れば、川居がドン引きの表情を浮かべつつもコートの方を指差している。